集中力は鍛えられる!注意を「向け直す」という考え方、ビジネスにもスポーツにも生きる思考法とは 『集中力革命 ブレても力を発揮するメンタルの技術』(伴元裕著、Gakken)

2026.06.08 Wedge ONLINE

 プロ野球ソフトバンクホークスのメンタルコーチである伴元裕氏が、選手の集中力維持と実力の発揮に向けた思考法を説く本である。試合になると緊張して集中力が維持できないというアスリートは多い。ビジネスパーソンが重要なプレゼンに臨む時や、受験生の試験本番などでも同じである。そこで作用する心の動きを科学的に分析し、意識の持ち方でどんな効果がもたらされるのかを解明した。

(SunnyVMD/gettyimages)

 著者は商社勤務を経て、2025年シーズンからソフトバンクホークスに加入し、メンタルパフォーマンスコーチとして選手のサポ―トを行う専門家である。メンタルについての重要性を学び、実践する中で、自然な形でのセルフメンタル掌握法を示す。

メンタルは身につけられる

 欧米ではプロチームに所属するメンタルの専門家が選手に助言するシステムができており、それを参考に、日本のプロ野球界でもメンタルの重視を図る球団が増えている。パ・リーグのソフトバンクに限らず横浜DeNAベイスターズなどセ・リーグの他の球団でも同様の動きが出始めている。メンタルケアを行うことでフィジカル全体を調整しようという考え方である。

 著者は最初にこう定義する

 メンタルは“気持ち”や“根性”に左右されるものではありません。ましてや、生まれ持って決まっている性格や気質でもありません。誰もが身につけられる「思考の扱い方」なのです。

 外せば負けが決まるサッカーのPKを蹴る前など、大事な場面で気が散るのは「当たりまえのこと」と受け入れ、その中で注意がどこに向いているのか、そして次にどんな行動を選んでいるのかに目を向ける必要があると指摘する。その点について著者はこう記す。

 集中力とは、集中し続ける力ではありません。注意が逸れない力でもありません。注意が逸れたことに気づき、必要な場所へ戻せる力なのです。

 野球でいえば、ミスをした直後や、凡退した直後、失点した直後に感情が動くことは自然なことであり、「次の一球で何に集中するのか」や「自分がやるべき役割は何か」について何度でも注意を向け直していくことが重要だという。そんな中で、ベテラン選手は、思考がシンプルで具体的な戻し先を持っているという。

集中力をつける三つのポイント

 そして本書のタイトルにもある「集中力革命」について著者は三つのポイントを示す。

 一つ目は、不安や緊張の中でどこに注意を向け、どんな行動を選び続けられるかという「メンタルの捉え方」だという。スキルとして扱う点に特徴がある。

 二つ目は、どんな感情があっても、注意をどこに向け直すかを選ぶ「操作対象の更新」だという。

 三つ目は、前述の「集中の捉え方の更新」だという。

 著者は具体的なホークスの選手を紹介しながら解説する。25年にパ・リーグ最高出塁率を獲得した柳町達選手は、自分が緊張していることを自覚し、その中で何をすべきか、何に注意を向けるかを著者とともに整理することでシーズンを通じて安定したプレーを続けることができたという。

 また昨年の日本シリーズ第5戦で延長11回に勝ち越しホームランを放った野村勇選手は「戻り先」の整理を徹底的に行った一人だった。「スタメンに定着したい」という目標に向け、どんな能力を伸ばしていくと定着する確率が上がるかを著者と整理し、注意を向けることができて再現性の高いポイントを二つまで絞ることができたという。

 一方、集中を乱さないように、目標や戻り先を「結果」ではなく「積み重ねられる対象」に置いて成功したのが周東佑京選手である。目標設定の一つを打率ではなく安打数に置き、一本一本積み重ねていくことにしたという。