「残業したくないんですよね」「それって僕の仕事ですか?」「飲み会ダルいんで行きたくないです」「そのやり方タイパ悪くないですか?」
指示は素直に聞かず、指導をすれば「それってパワハラですよね?」と口答え。世間は「価値観のアップデート」を強いてきて、Z世代への指導はどんどん弱腰になってしまう。好き勝手にふるまうZ世代部下のおかげで、職場の空気は弛緩する一方です。つけあがってさらにモンスター化するZ世代部下は、あらゆる職場に出現し、管理職を困らせています。そんな現状に、書籍『Z世代を甘やかすな』の著者黒坂岳央さんは「Z世代を甘やかしてはならない」と警鐘を鳴らします。Z世代部下にかき回された職場を正常化するために、Z世代を甘やかさない、毅然としたコミュニケーションを身につけましょう。
部下となって日の浅いZ世代社員の仕事のクオリティが奮わない、進捗が遅く締め切りを超過している、取引先からも苦言を呈された……。管理職として、部下を注意しなくてはならない。世のZ世代社員は、少し指導すれば「それってパワハラですよね!?」とキレるらしいが、この部下は大人しそうだから心配はないはずだ――。そう思って「最近、資料のミスも多いし、仕事の進みが遅いようだけど、ちゃんと優先順位つけてるかな?」とZ世代社員に声をかける。もちろん、パワハラにならないように優しい口調だ。
すると、Z世代部下の表情は固まり、暗い声でこう言う。「すみません、僕HSPなので出社していると集中できなくて」「ネットの診断でADHDって出たので、ケアレスミスが多いのは仕方ないんです」「MBTIがINFP型だから、こういう仕事向いてないんだと思います」。
一部理解不能なアルファベットの羅列は、心理学や精神医学の用語である。もちろん、Z世代部下は心理学や医学に精通しているわけではない。ネットやSNSを通してカジュアルに消費されているラベルを自分に貼り付けているだけだ。
根気よく話を聞いても、その内容はHSPだから配慮しろ、ADHDだからミスを許せ、MBTIタイプが違うからあの人とはあわない、メンタル不調だから休みたい……といった、眩暈を起こしかねないほどの言い訳のオンパレードである。
医師の正式な診断書もなく、ネットの簡易診断テストで「HSP気質がある」と自己判定した程度の人間が、それを盾に業務上の配慮を強要するのは、企業社会において許されるべきことなのだろうか。彼らのこうしたカジュアルな「弱者アピール」は、本当にうつ病や適応障害などで苦しんでいる、真にサポートが必要な人々に対する深刻な冒涜である。本当に病に苦しむ人々は、自らの弱さを声高に叫んで権利を主張したりはしない。むしろ、周囲に迷惑をかけていることに引け目を感じ、ひっそりと苦しんでいることのほうが多い。
だが、Z世代は違う。彼らは「弱さ」を隠すどころか、堂々と振りかざす。なぜなら、現代社会において「弱者であること」は、最強のカードになるというバグ技に気づいているからだ。かつての社会では、強くて優秀であることが評価された。しかし、行き過ぎたコンプライアンスとポリティカル・コレクトネスが支配する現代では、ヒエラルキーが完全に逆転している。「私は傷ついた」「私は繊細だ」と宣言した瞬間、その人間は「保護されるべき被害者」へと昇格する。そして、少しでも厳しい指導を行う上司は「無理解な加害者」として糾弾されるリスクを負う。被害者ポジションを取れば、面倒な仕事から逃れられ、責任を負わず、誰からも叱られない。これほどコスパのいい生存戦略はない。心の中で泣いているのは尻拭いをさせられる上司だ。