「うちの幹部が同じことをしたら…」巨人・阿部前監督辞任から経営者・人事担当者が備えるべきこと

2026.06.22 Wedge ONLINE

経営者・人事担当者が今、備えておくべきこと

 最後に、実務的な視点を三点示したい。

 第一に、家庭内の事案であっても、逮捕という事実が生じた時点で、企業の対外的対応が即座に問われるという前提を持つことである。対応指針を事前に検討していない企業ほど、初動の遅れが批判の対象になりやすい。

 第二に、被害者保護の最優先を、対応方針の核に置くこと。今回の事案でも、世論の一部には「被害を訴えた側」への疑問や非難が向けられる場面があった。しかしその多くは匿名である。社会的信用が求められる警察・心理学、危機管理領域の専門家の多くは球団の迅速な対応を肯定的に評価した。この点を過小評価すべきではない。

 暴力を振るった側に責任があり、被害を訴えた側に非はない。この基本認識を、企業としての対応方針にも明確に反映させる必要がある。

 第三に、処分(辞任・解雇)だけで問題が解決するわけではないという認識を持つことである。単に処分して終わりにするのではなく、会社としても問題意識を持って当事者の改善に並走していく。加害者プログラムのような行動変容のアプローチが社会に存在することを知っておくことは、人事担当者にとって今後ますます重要な知見となるだろう。

 家庭は職場の外にある。しかし、その境界線は、もはや経営者・人事担当者にとって安全な防波堤ではない。

 今回の事案が示したのは、家庭内の出来事が一夜にして企業の危機管理事案に変わるという現実そのものである。備えは、起きる前にしか作れない。