6月1日。採用担当者は、選考開始に合わせて面接の日程を確認し、学生に送る案内文を整えている。ところが、その日に届く数字は、採用の現実を突きつける。
採用・就職支援サービス会社、キャリタスの調査によると、2027年度卒学生の6月1日時点の内定率は8割を超えているという。制度上は採用選考が始まる日であっても、実態としては、多くの学生がすでに内定を手にしているのである。
就職活動は、もはや「解禁日」から始まるものではない。インターンシップ、早期説明会、早期選考、内々定と、企業は少しでも早く学生に接触し、他社に先んじようとする。学生もまた、周囲に遅れまいと早く動き、早く安心を得ようとする。
企業は「採れなくなる不安」に追われている。学生は「取り残される不安」に追われている。双方が安心を求めて急いでいるはずなのに、その急ぎ足の先に、本当に良い出会いは生まれているのだろうか。
もちろん、早く動くこと自体が悪いわけではない。人手不足が深刻化する中、企業が学生と早く接点を持つことには意味がある。学生にとっても、早くから社会や仕事を知ることは大切だ。
問題は、早く採ることそのものではない。会社の中身を十分に見せないまま、学生を早く囲い込もうとすることにある。青田買いの問題は、青いうちに採ることではない。何の畑で、どう育てるのかを示さないまま、刈り取ろうとすることにある。
採用活動が早まるほど、企業は焦る。「優秀な学生を逃したくない」「競合より先に接点を持ちたい」「内定辞退を防ぎたい」「今年こそ必要人数を確保したい」というのは、どれも切実な思いである。
採用が思うように進まなければ、現場の負担は増え、商品やサービスの質にも影響する。だから、早期化への対応を怠ることはできない。
しかし、採用が早まるほど、逆に曖昧になりやすいものがある。それは、会社が学生に何を約束しているのかである。
入社後、どんな仕事を任せるのか。どんな力を伸ばしてほしいのか。何を大切にする会社なのか。どんな働き方を求めるのか。どんな人には合い、どんな人には合わないのか。これらを十分に語らないまま、「成長できます」「若手が活躍できます」「風通しのよい会社です」といった言葉だけを並べても、学生には会社の実像は見えない。
採用の場では、企業はどうしても良いところを見せたくなる。学生もまた、良い自分を見せようとする。すると、互いに本音を隠したまま、内定だけが早く出る。入社後に待っているのは、「思っていた会社と違う」「思っていた仕事と違う」というずれである。
これは学生だけの責任ではない。企業が自社の仕事や価値観を十分に言語化できていないことの表れでもある。
早く内定を出すことは、採用活動の一つの成果ではある。しかし、本当の成果は、入社した人が力を発揮し、会社とともに育つことである。内定はゴールではない。会社と若者が、ともに働く関係の入口である。
ここで示唆に富むのが、「面白法人」を掲げる株式会社カヤックである。同社は経営理念として「つくる人を増やす」を掲げ、新卒採用ページでも、自社を面白いサービスを次々に生み出すクリエイター集団と位置づけている。社員が面白がって働くこと、オリジナリティのあるものをつくり続けることを大切にしている会社だ。