太平洋上での中国原潜ミサイル発射実験はオウン・ゴールに!太平洋島嶼国はむしろ結束へ、フィジーとの「平和の海同盟」条約とは?

2026.07.31 Wedge ONLINE

 豪ローウィー研究所のオリヴァー・ノブトウが、同研究所のウェブサイトに7月7日付で掲載された論説において、「7月6日の太平洋へ向けた中国原潜ミサイル発射実験は中国の『オウン・ゴール』となった、それは地域の安全保障をめぐる中国との主導権争いで豪に有利に決着する支援材料を与えてしまった」と述べている。

(dikobraziy/3dmitry/gettyimages)

 この論説は、①豪州の対太平洋諸国外交はこのところ「連勝」している、②中国原潜からの南太平洋に向けた模擬ミサイル発射は、太平洋島嶼国での安全保障をめぐる主導権争いで豪州を有利にすることになった、③2022年以来、豪州は「巧みな外交戦略によって、一連の実利的な協定が実現している」(ツバル、ナウル、パプアニューギニア、バヌアツ、フィジー等の例)、「いずれの協定でも、豪州は、協力相手国が第三国、すなわち中国との安全保障上重要な分野での協力を検討する際には、必ず豪州と協議することを義務付ける条項を入れている」、④これらの成果は、「豪州のアルバニージー首相にとり国内政治上の追い風にもなる」と述べる。

 7月6日、中国は原潜から模擬ミサイル(JL-3、核搭載可能)を南太平洋の非核地帯(ラロトンガ非核地帯、中国は締約国)に向け発射した。ミサイルは、「ツバルの排他的経済水域(EEZ)付近」に着弾したと報じられている。

 フィジーでのフィジー・豪州安保合意署名と同じ日に発射したというタイミングは、非常に未熟、無神経である。最近、中国はこうしたオフセット型の行動が目に付く。

 7月7日付けの環球時報社説は、関係国は中国の実験に「慣れるべきだ」というが、傲慢な言い分だ。島嶼国の反発は当然で、太平洋諸島フォーラム(PIF)全体としての非難声明案が回覧されているという。

 既に豪州、ニュージーランド(NZ)、フィジー、ソロモン、マーシャルなどが個別の非難声明を出している。8月末から開催されるPIF首脳会議でも議論になるだろう。

 中国の振る舞いは、南シナ海での動きを含め、益々問題が多くなってきている。今回ミサイル発射とそのやり方も、中国の信頼を大きく損なっただろう。

潮目が変わった中国と豪州の競争

 豪州アルバニージー労働党政権は、非常に賢明な外交を精力的にやっている。バヌアツ、フィジーとの協定をまとめ、7月7日にはソロモン諸島独立48周年記念式典出席のためホニアラに行き、帰国するやブリスベンでパプアニューギニア、サモア、トンガ首脳と会議し、9日には豪州を訪問したインドのモディとメルボルンで会談した。さらに、8日には、パプアニューギニアとの相互防衛条約(れっきとした同盟)が正式に発効した。

 これまでのやや高圧的な豪州への太平洋島嶼国の批判は一掃され、油断は禁物であるものの、豪州の太平洋島嶼国を巡る中国との競争の潮目も変わって来ているようだ。中国が安保協定を締結し西側を驚かせたソロモン諸島も、5月にはソガバレ首相(当時)の党の政権が不信任議決で退陣、それまで台湾政策を推進し、ソガバレの対中傾斜を批判してきた野党のワレ(マライタ州首相)が首相になった。ワレは、地域安保条約の締結を提案しているという。

 島嶼国と共に考えるという姿勢を強く打ち出したアルバニージーやウオン(外相)等の努力は評価される。日本としては、このような豪州の努力を勇気づけ、手助け、連携していくことが重要だ。

 アルバニージーは、6月29日、漸くバヌアツとのナカマル協定(安保・経済協力)に署名した。昨年9月のアルバニージーの同国訪問の時に署名予定であったが、バヌアツが留保、署名が棚上げになっていた。

 その後条文を修正し、今回署名に漕ぎつけた。同盟的規定は薄まっているが、中国を念頭に、重要インフラにつき軍事目的に使用しないこと、第三国の関与がある時には豪州と事前に協議することが規定されている。同時に、豪州による経済協力の拡大が規定されている。

フィジーが同盟国に

 7月6日に署名したフィジーとの「平和の海同盟」条約は、画期的である。「いずれか一方の締約国に対する軍事攻撃は双方にとって共通の危険と見做し、国内手続きに従って共同で対処することを宣言する」(6条)と規定する。

 これで、フィジーは、米国、NZ、パプアニューギニアに次いで、豪州の四番目の同盟国になる。この条約は、他の太平洋国家による加入に開放されており(12条)、多国化する余地がある。

 また、有効期間は無期限、1年の予告で脱退できる(15条)。さらに、包括的な協力関係を定めた「ブバレ連合条約」にも署名した。

 

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