「加賀屋」に「モスバーガー」…台湾人の暮らしに浸透する〝ニッポンブランド〟

2026.08.13 Wedge ONLINE
左からモスバーガーの小林豊氏と平林篤氏。大崎の本社ビルにて(WEDGE)

 「創業者は何より信頼を大切にしていた。黄氏が慶應義塾大学出身で日本文化への理解が深かったために、良好な関係を築けたことが出発点でした」

 当時は台湾で日本ブランドが今ほど浸透しておらず、まずは「モスバーガー」という存在を知ってもらう必要があった。黄氏の人脈を生かした好立地への出店に加え、記者発表を積極的に実施。駅構内のワゴン販売なども展開し、顧客との接点を増やしていった。

 その一方で、台湾の食文化への対応も進めた。代表例が「ライスバーガー」だ。米食文化が根付く台湾で人気を集め、「今ではモスといえばライスバーガーといわれるほどになりました」(平林氏)。

 もっとも、日本の商品をそのまま持ち込んだわけではない。台湾ではライスバーガーのバンズに大麦を混ぜるなど独自の工夫も施されている。朝食メニューにはベーグルサンドといった多彩な商品が並ぶ。

小誌取材班が台湾のモスで朝食として食べたライスバーガー(奥)とベーグルサンド(手前)(WEDGE)

 実際に台北市内の店舗を訪れると、レジ前には菓子や飲料などの物販コーナーが広がる。贈り物文化のある台湾らしい光景だ。小誌記者が店内を見回していると、スタッフの方が日本語版のメニューを差し出してくれた。

 こうした接客は偶然ではない。国際部グループリーダーの小林豊氏は「台北市には現地スタッフ向けの研修センターがあります。講師は台湾人ですが、日本のモスでサービスを学び、その精神を現地で継承しています」とその背景を語る。

 さらに、品質管理においてもメイン食材の製造工場を日本法人が設立、運営することで日本基準の安心、安全を提供しているという。

 台湾の生活様式や食文化に合わせて変えるべきものは変える。一方で、接客や品質といった日本らしさは守り続ける。その両立こそが、モスバーガーが台湾で「国民食」と呼ばれる存在になった理由なのだ。