ビル・ゲイツが警鐘を鳴らす「生成AI」3つのリスク…増える仕事と減る仕事、最も影響を受けるのは誰か?

2026.09.07 Wedge ONLINE

 ゲイツはノートの後半で、リスクに対処するための具体策を述べ、失業率が急上昇し、地域社会が苦境に陥り、国民の信頼が失われる前に行動を起こし、政府が包括的に取り組み、他の政府とも協力することを提案している。正しく対応すればAIは人類に計り知れない恩恵をもたらすとも述べている。ゲイツの発信はこれからも続くのだろう。

 ゲイツが懸念する雇用への影響は出ているのだろうか。報道では複数の大手テック企業がAI導入による雇用削減を発表している。私たちの仕事はどうなるのだろうか。

AIによる雇用の減少は若年層を除きまだ多くない

 大手テック企業は、AIへの移行を理由に雇用の削減を進めている。今年5月にメタは、8000人の削減と7000人の異動を発表した。シスコは4000人、アマゾンは1月に1万6000人、オラクルは3月に3万人の解雇を発表した。

 AI移行を理由に解雇するのはテック企業だけではない。今年5月に自動車大手GMはIT部門でAI知識のある人材に入れ替えるため600人を解雇した。インターネット決済サービスのペイパルは、4760人の解雇を発表した。

 報道では目立つAI関連の解雇だが、今年7月に公表されたスタンフォード大学の調査では、現時点では雇用に大きな影響は出ていないようだ。

 22年のChatGPT導入以降、導入の進み具合により企業を5分割し、失業率の変化を調べたところ、もっとも導入が進んだ上位20%では0.77%上昇、導入がもっとも進まなかった下位20%は0.85%上昇と、AI導入の影響は見られなかった。

 しかし、AI導入の効果が高いと考えられるカスタマーサービスとソフトウエア開発での年齢別の雇用者数を調べたところ、経験のある雇用者の数は変化していないものの、若年層の雇用者が大きく減少していることが分かった。

 22歳から25歳の雇用者数は約2割減少しており、AIが新卒者の役割を代替しているのではと推測される。

 ゲイツはゲイツノートの中で、「もっともリスクにさらされるのは、簡単な仕事であり、新たに創出されるほとんどの仕事はスキルを必要とする」と指摘しているが、すでに起きていることはこの指摘を裏付けている。 

これからリスクに晒される仕事

 生成AIを手掛けるアンソロピックとオープンAIの経営者は、失業率が20%に達する、あるいはAIが業務の40%を担うことになるとして、大きな失業が発生すると予測した。

 その後、悲観的な予測は撤回され、AIは雇用を奪うものでなく生産性を向上させるものと今は見解を変えている。

 新卒者を除き、それほど大きな影響はないだろうとの安堵した見方が広がっている。AIが失くす仕事もあるが、新たに作られる仕事もあるし、変化には時間がかかるというのがその背景だ。具体例がある。

 50年の国勢調査であげられた270の職種のうち消滅した仕事は、エレベータガール・ボーイだけだった。73年に銀行にATMが導入された時、銀行窓口職員の失業が予想されたが、仕事内容の変更により失業は発生しなかった。

 しかし、ビル・ゲイツは、変化のスピードは実装に時間が必要だった新技術導入あるいはインターネットとは比較できないくらい早く、多くの仕事が早期にリスクに晒されると述べている。AIは過小評価されており、人間の認知能力を代替できる可能性がある以上、今までとは違うと指摘する。雇用を守るためにもAI利用に関する政策、システムが必要なのだ。

 米労働省は、これからの10年間で雇用が伸びない産業を予測している(図-1)。35年までの全雇用の成長率は3.5%なので相対的に雇用の伸びに追いつかない産業だ。