7月19日。小誌記者が訪れたのは、埼玉県のJR吉川美南駅に隣接するイオンモール内にあるフットサルコート・「ソルンコミュニティフィールド」だ。この場所でアジア大会に出場する日本代表選手たちが練習に励んでいると聞き、現地へ駆け付けた。
フットサルコートだが、競技は異なる。「テックボール」という新競技を取材するためだ。テックボールは、サッカーと卓球を組み合わせたハンガリー発祥のスポーツで、2012年に考案された競技である。
ただ、集ってきた選手たちの第一印象はサッカー選手そのものだった。それぞれ、早稲昭範さん、坂本唯那さん、新井誠弥さんである。
彼らがコート脇から運び出してきたのは、高さ約1.7メートルほどの折り畳まれたテーブルのようなものだった。
今回、アジア大会の新競技として正式に採用されたのだ。
リフティングやヘディングを駆使して相手コートへボールを返す。「3タッチ以内」で返球する必要があり、同じ部位での連続タッチは禁止されている。無論、選手にはサッカー経験者が多いわけだが、技術の習得は一筋縄にはいかないようだ。
「ボードの絶妙に湾曲したあの形が、相手コート側の奥行きをつかみづらくさせるんです」(新井さん)
では、リフティングのうまさが肝なのか。日本テックボール協会会長も務める早稲さんは、「寝転びながらのリフティング」のギネス世界記録を保持する超人でもある。しかし、思った通りの回答は返ってこなかった。
「リフティングはあくまでパーソナルスペースで完結する、いわば『縦軸』の運動でしかありません。でもテックボールには『横軸』の概念が加わる。まったくの別物なんです」
「アジア大会の強豪は?」と聞くと、タイやイラク、ミャンマー、クウェートの名前が挙がった。フィジカル面で差を感じることもあるのか。
「ジャンプ力も含めて、海外の選手は『規格外』ですよ。『キャプテン翼』の世界観をそのままぶつけられるイメージです」(早稲さん)
日本はいかにして勝つのか。早稲さんは「インテリジェンスです」と即答。練習をしばらく観察していると、その意味が分かってきた。
相手コートにボールを強く打ちつける「スマッシュ」は分かりやすい技だ。一方で、ボールがわずかしか跳ねないように肩やくるぶしなど体の一部を触れて勢いを失わせる「ドロップ」ショットの多彩さに目を引かれた。特に、坂本さんはバックスピン(自分側に回転)のかかったヘディングを打ち分けていた。「世界を見渡してもこれができるのは坂本さんくらいだ」と早稲さんは言う。
派手な動きももちろん見どころだが、相手の利き足ではない方向へボールを返すなど、知的戦略が詰まっているところもこの競技の魅力だ。アジア大会には早稲さん、坂本さん、新井さんに加えて、納富翔大さんの4人が出場する。
早稲さんが意気込みを語る。
「最近、サッカーの日本代表がテックボールを楽しんでいる様子が話題になりました。競技の認知度が上がったのは喜ばしいことですが、『レクリエーション』という認識で終わらせてはならないと思っています。
目標はもちろん、金メダルです。プロとして日本人が活躍できる競技であるということを、この大会を機に知らしめます」