さらに、そう思う理由として、調査対象者の86%が「飲酒自体が、がん、心臓病、精神不安のリスクを高めることを指摘した最新の医学的研究についてニュースで知った」と回答していることが分かった。
その「最新の医学的研究」だが、主なものとしては、①世界保健機関(WHO)研究報告(23年)②ランセット・グローバル疾病リスク・レポート(26年)③米保健人的サービス省(HHS)および国立がん研究所生理学メカニズム研究(26年)などが挙げられる。
そのいずれも、「適度の飲酒は健康にプラス」とするこれまでの社会通念を根本的に覆した点で、“画期的警告書”として重視されている。
「WHO報告」の中で最も注目されたのが、「いかなる量のアルコールであっても健康上、安全ではない」とした指摘だ。そして、次のような研究上の「最終見解」を明らかにしている:
① 「アルコールは、アスベスト、たばこと同様に、『グループ1』の発がん性物質のカテゴリーに分類される。アルコールに起因するあらゆるがん患者のうちの半数が、1週間で1.5リットル以下の少量のワインを飲んだ人たちで占められている」
② 「アルコールは、大腸がん、乳がんなど、7タイプのがんの原因となる」
国連機関の報告に続き、米国でも去る25年1月には、公衆衛生の政府最高責任者であるSurgeon General(公衆衛生長官)が、飲酒とがん発病との相関関係に言及した通達を出したほか、連邦保健福祉省所轄の疫病予防管理センター(CDC)も、「いかなる量の飲酒もがん発症のリスクを高める」「酒量を減らす方が増やすより健康にプラス」などとする研究結果を発表している。
さらにより具体的に、飲酒に起因するがん死亡者数の実態についても、「26年ランセット米国内健康追跡調査報告」によると、90年当時の死者数は約1万1000人だったが、23年には2万3000人にまで増えたという。
こうしたことから、日本でも古くから言い伝えられてきた『酒は百薬の長』の“神話”は、米国社会に関する限り、すでに崩れ去ってしまったことになる。
「健康意識の歴史的シフト」以外でも、最近顕著になってきた若年層を中心としたカルチャー、ライフ・スタイルの変化も指摘されている。
その一つは、「経済的理由」だ。近年、レストランなどで出されるビール、ワイン、カクテルなどの価格は、他の諸物価以上に高騰してきており、一般消費者が外食の際に少しでも出費を抑えようと、飲み物は注文せず、水だけで済ませる人が目立ってきているといわれる。
例えば、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市では、レストランで普通の食事をする際、ジョッキ1杯のビールを注文するだけでも8~10ドルは普通であり、1回あたりの食費は、チップ代込みで30ドル前後は覚悟しなければならなくなっている。ワイン愛好家の間でさえも、レストランではボトルで注文せず、グラス1~2杯で済ませる人が増え始めたと伝えられる。
“アルコール離れ”が特に顕著になってきたといわれるのが、90年代半ばから10年代初頭に生まれた“Z世代”や、81年から96年ごろに生まれた“ミレニアム世代”だ。彼らの世代の間では、深酒や泥酔、二日酔いは初めから軽蔑の対象とされ、パーティで仲間たちと会話を楽しむ際も、“シラフ”で通すことが当たり前のようになりつつある。
ビジネス誌「Forbes」最新号によると、1カ月のうち、「数回以上」、外食する人の数自体は、全体の77%と、従来からほとんど変化ないものの、コスト意識もあってレストランで普通に食事する人は49%に減っており、テイクアウトで済ませる人が多くなっている。テイクアウトの場合、アルコールを買う人はまれだ。