「ハローキティは日本の右翼と踊るべきではない」
10月28日夜、中国共産党機関紙・人民日報系の国際紙「環球時報」は、こんな見出しの社説を掲げた。サンリオが掲げる企業理念「みんななかよく」に言及し、「本当の『みんななかよく』は、スローガンやかわいいキャラクターづくりだけにとどまってはならない」と皮肉ってもみせた。
やり玉に挙がったのは、サンリオがTBS系日曜劇場「VIVANT」と組んだコラボ商品だ。社説の掲載から数時間後、サンリオの中国法人はSNSで謝罪し、「本コラボおよび後続のすべてのプロジェクト、宣伝活動を停止する」と発表した。
翌29日には日本本社も「ご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます」とコラボ終了を告知した。中国では販売していない、日本国内向けの商品だったにもかかわらずだ。
VIVANTの何が問題視されたのか? 放送中の第2シーズンでは、中国の諜報組織「シンシー」が、主人公らが属する秘密組織「別班」の隊員を拷問するシーンがある。中国国営中央テレビ(CCTV)系の「央視新聞」は10月25日の論評で、この拷問は「侵華日本軍が中国の抗日志士に用いた酷刑と高度に重なる」とし、それを「現代の中国人の姿に接ぎ木した」と非難した。
波紋はサンリオ以外にも広がる可能性がある。人気ドラマの第2シーズンとあって、VIVANTにはスポンサー企業も多い。中国メディア「中国藍新聞」は動画SNSで、サントリーがドラマとのコラボビールを出し、花王・スバルもスポンサーに名を連ねていると指摘し、中国世論の疑念に対して声を上げない「両面派」(二枚舌)企業だと主張した。中国メディアやインフルエンサーからは「中国で稼ぎながら、中国を貶めるドラマのスポンサーをするのか」といった批判が相次ぎ、SNSには「ボイコットするべき」との書き込みも見られた。
炎上の火種は、10月中旬からあった。SNS「微博」で、フォロワー164万人を抱えるインフルエンサーは13日、VIVANTを批判した。別班が人質救出のために「中国領土」に潜入し「悪い中国人」をあっさり倒して撤収する場面を取り上げ、これまでの日本ドラマは敵を架空の国にしてきたが、この作品は中国を名指ししている、単なる娯楽ではなく「認知戦」だ、と批判を繰り広げた。
この時点ではよくある投稿の一つに過ぎなかったが、10月25日に潮目が変わった。前述の央視新聞の論評をきっかけに、微博のトレンドランキングで「日本ドラマVIVANTが中国を中傷」が1位になった。官製メディアが取り上げたことで炎上の「格」が一段上がり、お墨付きを得たインフルエンサーやメディアが、関連する話題を次々と追いかけ始めた。
28日午後には人民日報のニュースアプリが論評を配信し、このドラマを「『投毒』された日本ドラマ」と呼んだ。日本人に毒、すなわち誤った考えを広めるとの意味だ。
同日夜の環球時報の社説は、サンリオに「日本の右翼に付き合って火遊びをしてはならない」と警告した上で、サンリオの中国での収入が2026年上半期に7.81億元(約187億円)と前年同期比4割超伸びていることにも触れている。これだけ稼げる中国市場を捨てるのかという脅しだ。
翌29日には外交部の郭嘉昆報道官も記者会見で「日本国内には、文化製品を通じて中国を醜悪化、中傷し、中国への憎悪を広めようとする勢力が一貫して存在している」と述べた。
中国側の論評に共通するのは、ドラマを日本による「認知戦」の一環と位置づける論法である。この言葉自体はインフルエンサーの投稿にすでに見えるが、官製メディアはそれを国家の話に格上げした。