中国のVIVANT批判でサンリオがコラボ中止に…チャイナリスクの〝新形態〟どう備えられるのか

2026.11.04 Wedge ONLINE

 人民日報は、外務省の27年度予算の概算要求に盛り込まれたAI関連経費までドラマと結びつけ、人々の認識に毒を盛る「認知投毒」だと断じた。つまり、VIVANTは日本政府主導の国策ドラマと示唆してみせたわけだ。

これまでとは違うチャイナリスク

 中国で日本のコンテンツや企業が批判を浴びること自体は珍しくない。ただ、これまで問題視されてきたのは、靖国神社や台湾、歴史問題をめぐる言動だった。今年1月に、靖国神社でのポケモンカードの体験イベントが中国からの批判を受けて中止されたのもその一例だ。

 だが、今回は靖国や台湾といった従来型の地雷に触れたわけではない。しかも、VIVANTは中国で放送されず、コラボ商品も中国では販売されていない。今年9月にカジュアル衣料のWEGOが人気アニメ「僕のヒーローアカデミア」とのコラボ商品を発売直前の12日に見送った一件と似ている。

 「僕のヒーローアカデミア」は、登場人物・志賀丸太の名前が、旧日本軍731部隊が人体実験の被験者を呼称していた「マルタ」を連想させるとして、20年に中国で批判を浴びた作品だ。集英社と作者の堀越耕平氏は謝罪し、名前を「殻木球大(がらき・きゅうだい)」に改めているが、その後も反中アニメとして今年2月に北京のアニメイベントでコスプレが禁止されるなどやり玉に挙げられてきた。

(『僕のヒーローアカデミア』HPより) 写真を拡大

 WEGOもこの事情は理解していたはずだが、中国向けに販売しなければ問題ないと判断したのだろう。だが、結局は炎上し販売中止に追い込まれた。サンリオしかり、中国向けではない商品まで炎上に巻き込まれるのは、確認できるかぎり今年に入ってからの現象だ。

 中国では踏むと爆発する世論の地雷があるが、中国に関する知識を持っていれば避けることは可能だ……とは、これまで専門家や中国ビジネス支援会社が言ってきたこと。筆者も似たような話をしてきた。ただ、最近の中国は過去の事例が通用しないケースが増えている。コラボやスポンサー企業の、しかも中国では販売されていない商品まで炎上するケースは管見の限りはなかった。

 この変化はなぜ起きたのか。推測になるが、地雷を避ける企業が増えたため、中国のネットユーザーが安全地帯だったはずの日本国内の企画を掘り起こして燃やす。そんな動きが広がっているのではないか。

 今後、問題はさらに拡大するだろう。中国でビジネスをする企業は、日本国内での展開やコラボにまで神経をとがらせざるを得なくなる。

 次の焦点はNHKかもしれない。VIVANTの主演・堺雅人氏は、第77回NHK紅白歌合戦の司会4人のうちの1人に選ばれている。人民日報の論評は名前こそ出していないものの、「このドラマの主演は紅白歌合戦の司会も務める」と書き、組織的な世論操作の文脈で取り上げた。

 批判の矛先はNHKにまで及ぶのか。11月8日の最終回、そして大みそかが次の山場となる。

中国の「炎上」にどう向き合うべきか

 言うまでもなく、中国の圧力によって日本の表現の自由が損なわれることがあってはならない。

 一方で、ビジネスのソロバン勘定としては悩ましい問題だ。この種の配慮は日本だけのものではない。84年の米映画『若き勇者たち(Red Dawn)』のリメイク版(12年公開)では、米国に侵攻する敵が中国軍から北朝鮮軍に変更された。『トップガン マーヴェリック』でも、19年の予告編で主人公のジャケットから台湾と日本の旗が消え、架空の紋章に差し替えられていた(22年の公開版では元に戻された)。

 中国の興行収入に占める輸入映画のシェアは19年の約36%から25年には約2割に下がった。市場としての比重が下がった今も、ハリウッド映画で中国人が悪役を務めることはまれだ。元米中央情報局(CIA)職員のジョン・サイファー氏は「プロデューサーから別の悪役を探すよう促される」と証言している。