働き方改革で消耗していく「中間管理職」の悲劇

働き方改革が進む一方、そのしわ寄せで管理職の苦悩は増えるばかりだ (写真:8x10/PIXTA)

働き方改革で会社の中間管理職が追い詰められている。

「残業だけ制限されて、業績目標は変わらない」「自分のキャリアの未来が見えない」「次の後継者がいない」……。2019年4月に働き方改革関連法案が施行されてから1年近くが経過したが、現場の管理職の苦悩がそこかしこで聞こえてくる。

働き方改革自体は進めるべきだが、現在の法令遵守という目的だけが前に出すぎた状況は、現場をむしばむ副作用をもたらしている。中でも極めて深刻なのが、「中間管理職の過剰負荷」の問題だ。いま、多くの企業で中間管理職が疲弊し、機能不全に陥り始めている。

管理職の業務量が増えた

では、管理職がどのような状況に陥っているのか。パーソル総合研究所は、管理職の中でも、現場に近い課長やプロジェクトマネジャーといった、「ファーストライン・マネジャー」2000人を対象に、置かれた状況を調査した(詳細はこちら)。

すると、働き方改革が進んでいると回答した企業のほうが進んでいない企業に比べて、「昨年より管理職自身の業務量が増えた」と回答している。

同時に、働き方改革が進んでいると回答した管理職は、「付加価値を生むような業務に着手」もできず、多くが「後任者の不在」の課題を感じている。グラフでは割愛しているが、ストレス度合いや疲労蓄積の度合いも高く、学びの時間を確保できておらず、転職意向も高い。

管理職の現状を簡潔にまとめれば、「休めない」「学べない」「(付加価値を)生み出せない」「育てられない」の四重苦だ。こうした自分の職場の惨状を目の当たりにしている部下は、この会社では管理職になりたくない、と出世意欲をなくしていくか、離職していく。

なぜこんなことになったのだろうか。この背景には、大きく3つの理由がある。

1. 働き方改革の「二重の矮小化」
2. 維持され続ける「期待値」の高さ
3. 企業人事側の「スキル向上」発想

1つ目は、本来、人々の働き方を変えるはずの「働き方改革」が、二重の意味で矮小化されているという状況だ。

「働き方」の変革のはずが、実際に企業で行われているのは業務目標もプロセスも変えずに残業の上限設定や承認制度だけ取り入れた、言わば、働く“時間だけ”の改革だ。しかも、その減らされるべき時間が、管理職以外の一般従業員の「管理されている労働時間」に限られてしまっている。

この働き方改革の「二重の矮小化」によって、管理職は「働き方改革」のメインの対象から外されてしまう。

管理職への過剰な期待感

2つ目は、期待値の高さだ。部下のマネジメントのみならず、プレーヤーとしての成果を求められる管理職がいま抱える課題は、ハラスメント防止法への対応、職場のダイバーシティー推進、コンプライアンス遵守、部下のメンタルヘルス問題など多岐にわたる。こうした課題の多くが、管理職の肩に重くのしかかっている。

しかも、日本企業の中間管理職への期待感はそれだけではない。「知識創造」や「イノベーション」といった企業にとっての新しい価値の創出においてもまた、中間管理職への期待値が高い。

ものづくりを中心に経済発展した日本企業の“強み”でもあったQC(クォリティー・コントロール)活動や小集団活動で、重要な役割を果たすのは現場を担う中間管理職だ。世の中で「中間管理職不要論」がささやかれようとも、「中間管理職こそ、自社の要」と考える企業は多い。

この状況はサッカーに例えればわかりやすい。かつてより試合のスピードは上がり、戦術は高度化・複雑化している。その中でいわば「キャプテン」たる中間管理職は、今、法令遵守というディフェンスも、業績管理という中盤のボール回しも、イノベーションというオフェンスも、すべてプレーすることを強いられる。