「会社を3年でやめる若者」が減らない根本原因

もちろん企業側でも、採用方法を見直すと同時に、人材流出に対しての対策も講じ始めている。最近注目されているのが「従業員エンゲージメント」とか「社内エンゲージメント」と呼ばれる取り組みだ。

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「エンゲージメント」はもともとマーケティング用語で、企業と顧客との信頼関係を高め購買につなげる施策のことである。

それが人事や組織開発の分野でも「企業と従業員の関係性づくり」という意味で使われるようになってきた。

社員に長く働いてもらうにはお金以外の結び付きが必要であるという考え方だ。

具体的には、社内イベントを開催して会社の中のコミュニケーションをよくするとか、透明性のある人事評価をおこなうとか、仕事の裁量をできるだけ自由にするなどして従業員のモチベーションを高めるといったことがなされている。

若者は我慢しなくてもいい

しかし、私はこのような取り組みはあまり効果がないと考えている。いくら職場の環境を改善しても、そもそもその仕事に向いていないのだから、「この仕事をこれから10年続けられるのか」と考えたとき、辞める人は辞めるものだ。

コストをかけて採用した人が短期間で辞めてしまい、またコストをかけて採用するのは確かに生産性が低い。だが、向いていない人に仕事をさせることのほうが、会社にとってはよほど生産性が低いのではないだろうか。

私は転職はできるだけしないほうがいいと考えている。しかし20代、とくに新卒は自分のことも世の中のこともよく知らずに就職するわけだから、選択を間違うこともあるだろう。本来ならば入った会社で勤め上げるのがいちばんいいが、絶対にダメだと思ったら我慢せずに転職すればいい。