ニューヨーク「コロナ禍」直撃した都市のリアル

アキヨさん(ジュエリーデザイナー・大学教授。家族は夫と10代の息子と娘):私はニューヨークの3つの大学で3Dプログラミングの講義を担当していますが、各校とも、オンライン授業への移行に向けて1週間の準備期間が与えられました。私は、以前から指導用の動画を作ってあったので、特に準備することもなく、Zoomでの授業も問題なく実施できています。

大学での講義と別に、個人でもセミナールームを借りて教えていましたが、こちらもオンラインにしました。今でも「会って習うこと」にこだわる人もいる一方、ニュージーランド、シカゴ、カナダなどからも申し込みがありました。以前も、他州から参加する生徒がいましたが、オンラインだと飛行機代も節約できますし、地球の裏側からも参加できるので、喜んでもらえているはずです。仕事も収入も減って学ぶことに消極的になっている生徒もいますが、私としては、こうしたダウンタイムこそ、新しいスキルを学んでほしいという気持ちがあります。

ユミさん(学生):私は今年1月末からニューヨーク市立のコミュニティ・カレッジ(公立の2年制大学)に通い始めました。学校は3月12日にクローズになりましたが、1週間後にはオンラインクラスが始まり、アメリカのシステムが発達していることに驚いています。

週1回はWebのビデオ会議「Zoom」でクラスメイトに会えますし、勉強方法や進路、生活面での相談は、すべてオンラインでサポートしてもらっています。これらのシステムはすべて無料なので、ありがたいです。ただ、5月からの夏学期がどうなってしまうのかは心配です。

エリサさん(大学職員):中学生の娘は、3月に予定されていた州の学力テストが中止になりました。1日中パジャマで、学校のオンライン授業を受けています。

ナオミさん(国際人材育成会社代表。夫は金融業。乳児も含め3児の母):子どもたちのバレエ、テコンドー、習字、ピアノは、オンラインレッスンで継続できています。スイミングだけお休み中です。ずっと家にいますので、決まった時間に習い事があることで、生活のリズムが整って助かっています。

筆者:ニューヨークに限りませんがアメリカでは大量の失業者が発生しています。職種や雇用形態にもよりますが、何らかの形で経済的ダメージを受けている人がほとんどです。

ユミさん(学生):コミュニティ・カレッジの学費を稼ぐため、シッターとして働いていたのですが、ケアしていた子どもの学校は休校、親はリモートワークとなり、シッターは不要とのことでいったん、無職になりました。レストランやヘアサロンで働いていた友人たちも、収入源がなくなり、夢をあきらめて日本に帰国した人もいます。

エリサさん(大学職員):私の夫が勤務するホテルも閉鎖が決まり、夫を含む従業員のほとんどがいったん解雇されました。本人は、「ホテル側は、このまま全員クビにして、若くて給料の安い従業員に総入れ替えするのでは?」と心配しています。

失業仲間がたくさんいて、支え合えているのが唯一の救いです。リフォーム会社に勤める私の弟2人も仕事がなくなり、揃って失業保険を受けることになりました。正直、コロナに感染するということももちろんそうですが、生活できない不安は現実的にはるかに大きいです。花屋に勤める友人も無職になり、レストランを経営する友人は、売り上げが一気に減ったそうです。

失業保険が出るので解雇してくれたほうがいい

ナツヨさん(プロスピーカー・戦略コンサルタント):うちは夫婦とも自営業なので、大企業の社員のように「とりあえず給与はもらえる」という状況にはありません。夫のデンタルクリニック(歯科医院)はクローズし、夫は急患があるときのみ、片道1時間歩いて出勤しています。収入は急患の診療分だけなので、悩んだ末にパートタイマー2人は解雇、フルタイマー2人には、25%の減給を提示せざるをえませんでした。うち1人には、「失業保険がもらえるので解雇してくれたほうがいい」と言われています。