ニューヨーク「コロナ禍」直撃した都市のリアル

アキヨさん(ジュエリーデザイナー・大学教授):ニュースを見ていると気分が沈み、眠れなくなることもあります。私は精神的に強いほうだと思っていましたが、今回はちょっと参っているかもしれません。ニューヨークに住む日本人の友人たちと、定期的にZoomで顔を見ながら話をしようということになっています。ほとんど家から出ていないので、人と話をするだけで、気分転換になりますね。

本当に自分に必要な人が見えてきた

ナツヨさん(プロスピーカー・戦略コンサルタント):家の目の前に病院があり、救急車のサイレンが1日中鳴り響いています。娘のオンライン授業の時間管理、宿題のチェック。その合間に仕事。そして3度の食事づくり。夫は歯医者という仕事柄、自宅でできる仕事はないため、家庭内の空気が重く、気分転換に出て行く場所もありません。

アパート内に、ラウンジやビジネスセンターはありますが、人がいると使えませんし、使うときも、除菌スプレー、手袋、マスク着用。ストレスを感じにくいタイプの私でも、さすがに疲弊します。コロナは経済的、精神的、物理的、人間関係にまで影響を及ぼしていると感じますが、心配してくれる人もいて、本当に自分にとって必要な人も見えてきたと思います。

ミギワさん(ピアニスト、コンポーザー、プロデューサー):以前お世話になった日本のラジオ番組の方が、仕事を失った私のために、わざわざ仕事を作ってくださるなど、つくづく、私の仕事は人と人とのつながりで成立していると実感します。

ナオミさん(国際人材育成会社代表):この1カ月、いろいろなことを考えました。今回のことがきっかけで、自分にとって本当に大切なのは何なのか、本当の意味での人との繋がりとは何なのかなどです。こういうときこそ、助け合いが大事だと思っています。私よりももっと厳しい状況の友人もいますので、クラウドファンディングの「GoFundMe」などを通じて、わずかながら支援させてもらったりしています。

ユミさん(学生):日本政府の対応にはがっかりしています。高齢者の割合が世界2位のイタリアが苦しんでいる間、世界1位の日本は、何を学んでいたのでしょうか。オリンピック開催は、国民の命よりも大切でしょうか。あいまいな指示では、さらに事態を悪化させてしまう気がしますし、国民も、政府が言うまで動かない受け身な姿勢に見えます。ニューヨークのこの悲惨な状況が、自分の親兄弟や友達が住む日本で繰り返されることがないよう、私の思いを伝え続けたいと思います。

ナオミさん(国際人材育成会社代表):政府や行政からの指示を待っていると、日本もニューヨークのようになってしまう可能性があると思っています。家族や友人たちには、「手遅れになる前に、自分たちで自主的にできることをするしかない」と伝えています。

アキヨさん(ジュエリーデザイナー・大学教授):日本には、リーダーシップをとれる人がおらず、国民の意識がバラバラになってしまっていると感じます。子どもたちの教育が犠牲になっていることも心配です。私の子どもたちは、8時半から3時まで、みっちりオンライン授業を受けています。高齢の先生も、一生懸命オンラインに対応しています。学校もサポートしています。日本の教育現場も、ダブレットが足りないなどのハードルがあるとはいえ、人命の次に大切なのは、教育だという意識で、がんばってほしいと思います。こういうことを言うと「外国かぶれ」と言われてしまいますが。

NYはトップも個人も徹底的に人命優先

ミギワさん(ピアニスト、コンポーザー、プロデューサー): ニューヨークでは、台風、大雨、大雪がくると、州知事の一声で、すぐに学校や劇場、美術館などは閉鎖、道路も封鎖されるので、こちらに来た直後は驚きました。トップも個人も、徹底的に人命優先です。

日本では暴風雨の中、会社員がスーツを濡らしながら出勤していて、かわいそうになります。「上司も出社しているから」ではなく、優先すべきは自分と家族の命です。命を危険にさらして出勤したり、自殺に追い込まれるほど働いたりしなくても、幸せに生きている人が世界にはたくさんいます。自分と家族を徹底して守ることが、周り人やその家族も守る気持ちに繋がり、そこから社会貢献の気持ちは生まれていくのではないでしょうか。

ナツヨさん(プロスピーカー・戦略コンサルタント):SNS上で、「欧米在住の日本人はおおげさ。『日本はのんき』と言われても、日本と欧米は違う」といった書き込みを散見します。でも、ニューヨークも、たった1週間で状況が急変しました。対岸の火事と思わず、1人1人が自分の責任として、とにかく極力外に出ないなど、できることを果たしてほしいと思います。