実は重労働「デスクワーク」疲れを楽にするコツ

動かないで作業をすることが「こり」と「痛み」の原因となります(写真:kuro3/PIXTA)
肉体労働のように体を酷使しているわけではないのに、なぜ、ひどい肩こりや腰痛に悩まされるデスクワーカーが多いのでしょうか? 実は、人間にとって動かないで作業をするということは一番の重労働だというのは、『肩・首・腰・頭デスクワーカーの痛み全部とれる医師が教える最強メソッド』の著者であり現役の医師である遠藤健司氏です。
同じ姿勢で15~30分もじっとしていると、血行が悪くなるうえに筋肉もかたまり、これが「こり」と「痛み」の最大の原因となるのだそう。そこで、仕事中でもちょこちょことできる「3つのエクササイズ」を教えてもらいました。

筋肉は動かないことによってかたまる

「デスクワーク」というと、椅子に座って作業するだけで、肉体労働よりも比較的ラクで恵まれている仕事だ、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、実は人間にとって、動かないで作業をするということは一番の重労働なのです。

当たり前の話ですが、人間の体というのは動くようにできています。当然ながら、人間の体をつくっている筋肉も、「動いていてこそ調子がいい」ように設計されています。

適度に動いている筋肉は、ポンプのように血液を出し入れさせます。すると、血液によって筋肉には栄養や酸素が運ばれる。ついでに、筋肉にたまっていた「疲れ物質(リン酸や乳酸といったもの)」を押し流してくれる。その結果、筋肉は元気でいられるわけです。

ところが、「同じ姿勢でじっとしている」という、およそ動物の体には向いていないことを要求されるのがデスクワークなのです。

同じ姿勢でじっとしていると、筋肉は動きません。つまり、血液を流すポンプが止まっているということです。そればかりか、動かない筋肉は、だんだん固くこわばってきて、血管を圧迫しはじめます。当然、血行は悪くなる。すると、筋肉に必要な酸素や栄養が届かなくなります。

さらに悪いことに、血液が押し流してくれるはずだった「疲れ物質」がどんどんたまっていきます。「疲れ物質」がたまると最初に感じるのが疲労感です。その後「こり」や「痛み」などの不快感に変わります。

以上のプロセスが、肩で起きれば肩こりになりますし、首で起きれば首こり・首痛になります。背筋やお尻といった、骨盤まわりの筋肉で起きると、腰痛になるわけです。これらの「痛み」は、ケガの痛みとは違い「だるさ」をともないます。

さらに悪いことに、人間の体は、痛みを感じると反射的に緊張するようにできていますので、筋肉痛(=こり、痛み)を感じた筋肉は、いっそう緊張します。すると、さらに血管が圧迫されて、血行が悪くなるという「負のスパイラル」を引き起こすのです。

同じ姿勢を続けて筋肉が動かなくなることを、私は「不動化」と呼んでいますが、この「不動化」が「こり」と「痛み」の最大の原因です。

ちなみに、肩こりよりもはるかに劇的で、つらい症状が出る「ぎっくり腰」や「寝違え」が起きるのも、実は同じメカニズムです。

“不動化”を防ぐ「3つの習慣」

「こり」や「痛み」を防止するためには、姿勢がいいに越したことはありません。猫背は肩こりをひどくしますし、坐骨を立てないだらっとした座り方は腰に悪影響があります。

ただ、どんなにいい姿勢でも、同じ姿勢をずっと続けていれば、やはり「不動化」が起きます。筋肉がかたまってきてしまうのです。
ですから、姿勢のいい人であっても、やはり大事なのは定期的に動くことです。

では、どのくらい動かない時間が続くと肩こりや腰痛につながるかというと、目安としては、30分間です。人は、15~30分「不動化」すると、静脈の血流量が15~20%減少すると考えられているからです。