実は重労働「デスクワーク」疲れを楽にするコツ

30分間、デスクワークを続けたら、もう「不動化」によるさまざまな弊害が生じはじめると考えてください。もちろん個人差がありますから、15分で肩がこりはじめる人もいるでしょう。デスクワークをするなら、最低でも30分に1回は体を動かさないとまずい、と考えましょう。

とはいえ、仕事中に大々的に運動できるような環境ではない、という人も多いと思います。そこで、今回は、作業をしている最中にできる、あるいは作業中に一瞬でできる簡単なエクササイズを紹介しましょう。

もしかすると、「エクササイズ」という言い方は適切でないかもしれません。それくらい簡単な、ちょっとした“動作”だからです。

①仙骨座位から坐骨座位に座り直す

最初に紹介するのは、“座り直すこと”です。椅子に座って仕事をする際には、15分に1回、座り直しましょう。

どのように座り直すかというと、「仙骨座位」から「坐骨座位」に座り直すのです。

15分に1回、骨盤を立てた「坐骨座位」に

仙骨座位とは、骨盤を後ろに倒して、ダラッと座った姿勢。骨盤の仙骨という骨(お尻の上のほうにあります)を座面につけた座り方で、一般に「だらしない座り方」あるいは「疲れているときのラクな座り方」とされているものです。

ラクなように見えて、実は背中・腰に負担をかけ、「フラットバック」の原因になるのがこの座り方です。

長時間、椅子に座って作業をしていると、たいていはだんだんと仙骨座位になってきますので、これを、15分に1回、骨盤を立てた「坐骨座位」に直してやります。

坐骨座位は、お尻の下、脚の付け根あたりに出ている坐骨を座面につける座り方です。このときに、筋肉を緊張させて姿勢を整えるのではなく、骨盤の上に背骨をきれいに積み上げるイメージで、できるだけリラックスしたままいい姿勢をつくるようにしてください。

この座り方をすると、自然に背筋が伸びるのがわかるでしょう。そして、腰や肩が少しラクになったと感じるはずです。

なお、普段から坐骨座位ができている人も、15分ごとにいったん体をダラッとリラックスさせて、そこから改めて坐骨座位で座り直す、という座り直しを行いましょう。もちろん、座り直しをするにせよ、できるだけ頻繁に立って動く時間をつくることは忘れないでください。

②あごを引いて姿勢をリセットする

もう1つ、姿勢を正すためにぜひやっていただきたい手軽な習慣が、「あご引き」です。

これも、やり方は簡単です。

①まず、あごを引きます
②片手を軽く握って、人差し指をあごの先に押し当てます
③少し力を入れて、10秒間あごを押します

ちょうど、ロダンの「考える人」のポーズを、背筋を伸ばして、あごを引いて行うイメージです。

あごを押してやることで、当然ながら前に出ていたあごは引っ込みます。それだけでなく、自然と背筋が伸び、骨盤が立つのもわかるでしょう。つまり、あごを押すことで、簡単に姿勢をリセットできるということです。

また、押されたあごはその力を押し返そうとします。このときに、首の筋肉が鍛えられるという効果もあります。筋肉が強くなれば、それだけ血流もよくなりますから、「こり」や「痛み」の改善に役立つわけです。

「座り直し」とあわせて、仕事中に簡単にできる習慣として、ぜひ取り入れてみてください。

「不動化」した筋肉を動かそう

③肩甲骨を寄せて胸を張る

私が推奨する「肩甲骨はがし」ストレッチは座ったままでもできるので、ぜひ仕事の合間にも行ってほしいのですが、動きが大きいぶん、オフィスの環境によってはやりづらい人もいるかもしれません。

仕事中、本格的に「肩甲骨はがし」までやれる環境にない人は、ときどき肩甲骨を動かすようにしましょう。

やり方は簡単。肩甲骨をギュッと寄せて、胸を張るだけです。

『肩・首・腰・頭デスクワーカーの痛み全部とれる医師が教える最強メソッド』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「肩甲骨はがし」ほどではありませんが、これだけでも「不動化」した筋肉はかなり動きます。そして、肩甲骨を寄せると、自然に背筋が伸びます。

「座り直し」「あご引き」と同様、肩甲骨を寄せるのも姿勢をリセットする効果があるということです。

仕事に集中していると、どうしても体を動かすことを忘れてしまいがちだという人は、スマートフォンのタイマーなどをセットしておくといいかもしれません。

長時間デスクワークせざるをえないとき、仕事中に一瞬でできる「こり」「痛み」予防の習慣として、仕事中にこの「3つの習慣」を定期的に行うよう意識してみてください。