「代謝が悪い人」がやっている残念すぎる習慣

代謝には「個性」がある

代謝がオーバーヒートしていないかということに加えて、ぜひ知っていただきたいのが、自身の代謝がもっている「個性」です。

脂質の代謝はいいけれど血糖値が上がりやすい人、逆に糖質の代謝はいいけれど脂質の値が上がりやすい人、両方とも上がりやすい人、あるいはタンパク質の代謝が悪くて血中のタンパク質が不足しやすい人など、人によって得意・不得意があります。

糖質の代謝の良しあしが表れるのが「血糖値」や、1~3カ月間の血糖コントロール状態を表す「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」、脂質の代謝の良しあしが表れるのが、主に「中性脂肪値」、タンパク質の代謝の良しあしが表れるのが「血清アルブミン値」などです。なお、アルブミンとは、血漿中のタンパク質の約6割を占めているものです。

血糖値やHbA1c、中性脂肪値は通常、高いことが問題となりますが、近年、血清アルブミンの不足が問題になっています。とくに高齢者は若い人に比べて血清アルブミン値の低い人が多く、認知症や脳血管障害、心疾患のリスクが高まること、さらには生命予後(病気が命に与える影響のこと)自体が悪くなることが知られているのです。

血糖値、HbA1c、中性脂肪値、血清アルブミン値は、いずれも血液検査で簡単にわかります。健康診断の結果を引っ張り出して、「代謝」という観点から改めて見直してみてください。

体質は変えられないけれど、行動は変えられる

「個性」という意味では、内臓脂肪をため込みやすい人、ため込みにくい人もいます。

もって生まれた体質、つまりは遺伝的な体質によって内臓脂肪をため込みにくい人はうらやましいですよね。私の家内がまさにそうなのです。筋肉質で細い。基礎代謝が高く、太りにくい体質なのです。

ただ、家内の行動を見ていると、じっとしていることがありません。ちょっと空いた時間があるとフローリングワイパーを取り出して床を掃除したり(うちは犬が2匹いるため犬の毛がたまりやすいのです)、片づけをしたり。休むのかと思うと今度はゴルフの練習をしたりと、つねにこまごまと動いています。お酒は飲みますが、台所で料理をしながら飲んだりしているので、座ってダラダラと飲むことはありません。

そうした様子を見ていると、太りにくいのには、もって生まれた体質だけではなく、その人が取る行動の影響も大きいと気づかされます。遺伝的な体質は変えられませんが、行動は、自分次第で今日からでも変えられます。

すでに習慣になっている行動を変えることは大変ですが、そんなときには、「代謝を理解すること」がとても役立ちます。代謝を理解すれば、体内で起こっていることをイメージできるようになり、おのずと行動が変わるからです。

例えば、空腹を感じたときに飴を1つなめることがいかに残念なことかがわかります。空腹を感じたということは、肝臓や筋肉に蓄えられたグリコーゲンや脂肪細胞に蓄えられた中性脂肪など、備蓄していたエネルギーが、今まさに使われようとしているということです。備蓄倉庫のシャッターがガラガラと上がり、在庫が運び出され始めたところなのです。

ところが、そこに飴玉という糖質を投入してしまうと、糖質はすぐにエネルギーに変わるので、備蓄倉庫のシャッターが下りて、在庫の運び出しがストップしてしまいます。

つまり、「新しいモノが入ったので、倉庫から持ってくる必要はないですよ!」と、指示を出してしまったようなもの。

しかも、飴の主原料は砂糖と水飴で、どちらも「二糖類」と呼ばれる2つの糖が結合した形です。体内で簡単に単糖類(ブドウ糖)に分解されるので、たった1個の小さな飴玉でもスーッと血糖値が上がります。