SmartNewsが「アメリカの分断」にかける勝負

ただ、その前から議会が分断していたという話もある。共和党と民主党がそれぞれ、1つの法案に対しどれだけ賛成・反対したかという調査もあるが、それを見ると議会の分断はだいぶ早くから見て取れる。そういう意味でやはり、政治と国民世論とメディアの相乗効果で分断が加速しているのだろう。

投票に行くまでをサポートする

――スマートニュースは今回の選挙に対応するためにどのような機能を実装しましたか。

さまざまな立場の意見をバランスよく提供しなければという問題意識はずっと持っていた。2016年の大統領選の際、社会の分断が非常に大きなテーマとしてクローズアップされ、(偏りない情報収集を行うためのツールとして)スマートニュースへの注目度は一気に高まった。さらに2018年からは現地でテレビCMも打って、スマートニュースが分断の問題に取り組んでいるという認知を広げることもできた。

「News From All Sides」の機能を使うと、簡単な操作でリベラル、中立、保守の立場からのニュースを読み比べられる(提供:スマートニュース)

今回の大統領選に先立ち、2019年9月からアメリカ版アプリで提供しているのが「News From All Sides」という機能だ。1つのテーマに関するニュースをリベラル、中立、保守の立場から読めるようにしたもので、当社に勤める主要な報道機関出身の複数のジャーナリストが政治コンテンツの分類方法を議論しアルゴリズムを作っている。

もう1つ注力したのが、行政区画ごとの投票関連情報まとめだ。アメリカの選挙は制度が非常に複雑で、どうやって投票するのかが州によって全然違う。選ぶのも大統領だけじゃなく、州のいろいろな役職者などを選ぶ。投票する人はそれらを理解するだけで大変なので、居住地をアプリに入力すれば「あなたの地域ではこうですよ」とわかるようにした。

選挙だけが民主主義じゃないが、選挙は民主主義の重要な一側面。だからまず選挙に役立つ良質な情報を届けたい。加えて、有権者がどんなにたくさんニュースを読んでも投票に行かないと意味がない。であれば、投票に行くことをサポートするところまで含め、われわれとしてできることをしたいと思った。

――実際の成果として、サービスの成長につながりましたか。

具体的な数字は非公開だが、(ユーザー数や1人当たりの視聴時間など)どれもとっても、アメリカで著しい成長を遂げている。

アメリカ訪問中は両陣営の支持者に積極的に話を聞いた(写真:スマートニュース)

――選挙時のこうした機能開発は日本でも行っていきますか。

選挙に関するコンテンツや機能の提供は過去の衆議院議員選挙などでも行ってきた。2021年に行われるであろう日本の衆議院選挙でも、良質な情報を提供できるようにしたい。

日本だと社会生活の中で分断を強く意識することはあまりないかもしれないが、水面下で起こりはじめている可能性はある。スマートニュースにどういう機能が必要とされるかを見極めるためには分断の実態を正しく把握するところから始めなければ、と社内で議論している。

――日本ではスマートニュースに対し、「公平性」といった課題解決のイメージより、「クーポン」など日常生活のお役立ちツールというイメージを持っているユーザーが多いように感じます。

日本においても新型コロナウイルス関連情報の提供など、かなり先進的な展開をしているし、選挙も含めて公共性を重視した情報提供も行っている。加えて日本では、クーポンとか生活に密着した機能も提供しており、そのイメージを持つユーザーもいるだろう。

1人のユーザーの中にも、当然いろいろな側面がある。民主主義社会の参加者としての一面もあれば、オトクに買い物をしたいと願う一面も、1日仕事して疲れたから癒やされたいと思う一面もある。そういう多様なニーズにスマートニュースのアプリで応えていきたい。