上司の仕事は「つくり笑顔」と「声かけ」で8割だ

吃音が治ったきっかけは、中学生のときに聴いた「落語」です。落語を何度も聴き、まねをするうちに、声の大きさ、息継ぎのしかた、間やテンポの取り方が少しずつわかってきて、話し方に自信が持てるようになりました。

高校時代は放送部に入部して、「話し方」に磨きをかけました。お昼の校内放送では私がディスクジョッキーを担当していました。

台本はすべて私の自作。放課後、台本を書いていると家に帰るのが面倒になって、そのまま放送室(スタジオ)で寝泊まりしたことも、たびたびありました。

私は山梨県の田舎で育ち、小・中学校時代は成績がよく、高校は地元の進学校に進みました。毎年1人ぐらいは東京大学に入学する高校です。1クラス55人で各学年13クラスあって、1組を筆頭に成績順にクラスが分けられていました。

1年のとき、私は2組。2年生になると、8組に落ちました。3年生のときはさらに落ちて、13組でした。13組の中でも成績は下で、学年でビリを争っていたほどです。

成績が落ちたのは、とにかく忙しかったから。放送部だけでなく、演劇部、女子バレー部のマネジャー、生徒会役員も掛け持ちしていたので、勉強どころではありませんでした。

私が今、人前で臆せず話ができるのも、笑顔を絶やさずにいられるのも、大きな声で話すのも、練習をして身につけたからです。

部下への「声かけ」の頻度をノートに記録する

コミュニケーションの取り方には、声かけ、飲み会、従業員アンケート、面談などいくつかの選択肢があります。

なかでも、最も簡単でお金がかからない方法が、「社長(上司)の声かけ」です。声かけのポイントは、「全員に、平等に、声をかける」ことです。

私がまだ「日本サービスマーチャンダイザー」(武蔵野の前身)の管理職だったとき、「いつ、誰に、どのような内容で声をかけたか」を記録して、部下に対する「声かけの量」が均等になるように心がけていました。

部下の名前と項目を書き込んだ表をつくり、声をかけたら「○」で埋めていきます。すると、「誰に声をかけていて、誰に声をかけていないか」が一目瞭然です。

野球が好きな部下Aと「昨日の広島カープの試合結果」について話をしたのなら「広島」とメモをしておきました。当時、部下は20名ほどいましたが、声かけの効果は絶大でした。私の率いる支店は組織としての一体感が増し、抜きん出た業績を上げることができた。

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社員は、上司の「不平等」「不公平」を嫌います。「元気か」「頑張っているな」といった短い挨拶でもいいので、「全員」に声をかける。「挨拶、日常会話、雑談」などの会話量を増やし、「気にかけている」「関心を持っている」ことを部下に示すことが大切です。

努力は、素質を追い越すことができます。笑顔も、コミュニケーションも、訓練をすれば、誰でも身につけることが可能です。

最初は「つくり笑顔」で構わない。社長、上司が今日から「笑顔で部下に声がけをする」だけで、職場の風通しがよくなり、情報が素早く社員と経営陣で共有され、会社の業績が上向きだすのです。