コロナ禍こそ物流に巨額投資しないとヤバい訳

同じようなタイムワープはデリバリーの世界でも起きています。それを如実に表すのがウーバーイーツの利用拡大です。コロナ前は出前よりもテイクアウトが主流だったのが、今ではスマホで注文して届けてもらうのが日常です。

アメリカでは2016年の時点で、レストランで作る料理の15%がデリバリー向けというデータがありました。今後は日本でも増えていくと考えていたのですが、それが一気に進み、ウーバーイーツは将来取るべきシェアを先取りした格好です。

また、これまでは物流センターから店舗にものを届け、各家庭から買いに行くという消費行動でした。

ところが、コロナ禍においては店舗から届けるネットスーパーや、買い物代行が増えました。CBcloud(シービークラウド)が運営する「PickGo(ピックゴー)」はまさにそうで、セブン-イレブンやスギ薬局などから商品をピックアップして届けてくれます。

「PickGo」は1回目の緊急事態宣言による外出自粛中に始まったサービスです。買い物に行けなかった人が欲しいものを手にできるようになり、固定客を得たという話を聞いています。流通が変わると物流も変わり、多様な配達方法も増えてくるのです。

面倒な買い物は合理的に済ませたい

消費者からすると、買い物には「楽しい買い物」と「楽しくない買い物」の2種類があります。

買い物する行為に価値があるなら百貨店や専門店に行きますし、日用品の購入など時間の消費が苦痛なら、アマゾンなどで定期購入をするなど、勝手に持ってきてほしいくらいでしょう。会社員も仕事の帰り道にネットで注文をして、そのまま店頭で受け取るようなスタイルは増えています。面倒な買い物は合理的に済ませたいのです。

買い物の選択肢も、オフラインでは買い店頭で受け取る通常の買い物と自宅で受け取る配達代行、オンラインでも店頭受け取りと自宅受け取りと、4つの選択肢があります。そこで、時間がほしい人はネットで注文し、労力が欲しいなら家まで配達を依頼するのです。

このように、消費者が変化して流通が変わるなら、物流も変化しないといけません。アマゾンであれば全国各地に1万坪を超える物流センターを持ち、新しい拠点も増やして出荷能力を上げています。

さらに彼らの場合は「アマゾン宅配(デリバリープロバイダー)」の割合を増やし、置き配を率先してスタートさせました。その割合は、いまでは全体の60%にもなります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)やSPA(製造小売業)、メーカー直販などを通じて、生産者と消費者のつながりが強くなっているのも、昨今における流通の変化です。これにより、物流にも変化が迫られています。むしろ、物流がボトルネックになっていて、物流が変わらないと流通が変わらないというのが本音です。

この場合、BtoBとBtoCの在庫を一元管理してセンター運営しようと考える流通会社は多いのですが、これはよくある失敗パターンです。むしろ、それぞれ別の物流センターで運営したほうがうまくいきます。

ユニクロが起こしたありえないミス

一時期、ユニクロも一元運営をしていましたが、そのときにオンラインで服を購入したら届くのに1週間かかり、かつ商品も間違っていました。そんな、ありえないミスが起こりうるのです。

なぜかというと、両者では伝票枚数、行数、ピース数、荷姿といった「物流形態」が大きく異なるからです。BtoBは伝票枚数が多くて一注文に対する行数も多くなりますが、BtoCはそうではありません。

アパレルであれば、畳まれたものかハンガーで吊ったものなどで荷姿も変わります。別の流通形態なのに同じ場所で作業をすると混乱し、それが遅延やミスにつながるのです。例えば、関東に店舗が集中しているなら大きな拠点を1つ持つ、個人向け通販は高い運賃がかかるので物流拠点を散らばらせることが考えられます。

このように、いまは物流を変えないと流通も変われない時代です。特に今後はオムニチャンネルが出てきて、タイムワープはさらに加速します。物流がボトルネックになり流通が変わることができず、売り上げが立ちません。アリババ創業者のマー氏がそうしたように、巨額の投資をして変革させる頃合いだと思います。

(構成:大正谷成晴)