長く通院していると、次第に薬が増えていきます。
高血圧の薬、糖尿病の薬、高脂血症の薬、骨粗しょう症の薬、逆流性食道炎の薬など、ある程度の年齢になれば、少ない人でも4、5種類の薬は飲んでいるのではないでしょうか。
朝だけで一回10錠飲んでいるという人もいます。とはいえ、どうしてこんなに薬が増えてしまうのでしょうか。
患者さんから「~がつらい」「~が痛い」といった訴えがあり、しっかり診療したものの、医師としては「心配いらないからそのままでいい」と言いたくなるような場合は、じつは少なくありません。
ですが、つらさや痛みをそのまま放置することを、患者さんに納得させるには時間がかかります。
患者さんとしても、実際につらさや痛みを感じているのですから、医師が「放置して大丈夫」と言っても、すぐに納得できないでしょう。
結果として、患者さんを安心させるためにも、診察時間を短くするためにも、訴えの多い人にはすぐに薬を出して対処してしまう、ということがあるのです。
また、それだけではありません。一度出してしまった薬はなかなか減らすことをできないのです。
こうして、あいまいな理由から出された薬が、ずっと出され続けてしまうということになります。
それに加えて、たくさんの患者さんを診ている医師の場合、いま診ている患者さんが一回にどれだけ薬を飲んでいるのかしっかり認識せずに、さらに薬を処方してしまうという場合もあります。
いずれにしても、このようにして、患者さんの安心のため、医師の診療時間節約のために、薬の量が増えていってしまうケースも少なくないのです。
では、どうすれば本当に必要な薬だけを残して、飲まなくても問題ない薬を減らすことができるのでしょうか。
それは、長くかかっていて、主治医となんでも言える関係になっているなら、その主治医に「薬がずいぶん多くなって飲むのが大変です」と素直に言ってみることです。
たとえば、内科、整形外科、皮膚科など科をまたいでさまざまな診療所にかかっている場合、あなたの主治医といえど、実際にあなたがどれだけ薬を飲んでいるのか知らないことも多いのです。
お薬手帳があるので、それを見ればわかるはずですが、外来が忙しい診療所だと、毎回それを確かめなくなってしまうものです。
なかなか主治医に「薬を減らしてください」とは言えないものですが、逆にそう言える間柄こそが、医師と患者さんの、正しい関係と言えるでしょう。
素直に意見を言える関係を持っていることは、自分自身を守るためにも非常に大切なことです。
しかし、患者側から薬のことを言うと、激怒する医師がいまだにいるのも事実です。
そんなときは、主治医を変えるチャンスと思いましょう。