健康寿命を延ばす「無理しない思考法」

「うわっ……私の飲む薬多すぎ!?」高齢者9割が悩む〝多剤服用〟の解決法

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薬が多くて困っている

長く通院していると、次第に薬が増えていきます。
高血圧の薬、糖尿病の薬、高脂血症の薬、骨粗しょう症の薬、逆流性食道炎の薬など、ある程度の年齢になれば、少ない人でも4、5種類の薬は飲んでいるのではないでしょうか。
朝だけで一回10錠飲んでいるという人もいます。とはいえ、どうしてこんなに薬が増えてしまうのでしょうか。

安心させるため、時間を節約するため

患者さんから「~がつらい」「~が痛い」といった訴えがあり、しっかり診療したものの、医師としては「心配いらないからそのままでいい」と言いたくなるような場合は、じつは少なくありません。

ですが、つらさや痛みをそのまま放置することを、患者さんに納得させるには時間がかかります。
患者さんとしても、実際につらさや痛みを感じているのですから、医師が「放置して大丈夫」と言っても、すぐに納得できないでしょう。

結果として、患者さんを安心させるためにも、診察時間を短くするためにも、訴えの多い人にはすぐに薬を出して対処してしまう、ということがあるのです。

また、それだけではありません。一度出してしまった薬はなかなか減らすことをできないのです。
こうして、あいまいな理由から出された薬が、ずっと出され続けてしまうということになります。

それに加えて、たくさんの患者さんを診ている医師の場合、いま診ている患者さんが一回にどれだけ薬を飲んでいるのかしっかり認識せずに、さらに薬を処方してしまうという場合もあります。

いずれにしても、このようにして、患者さんの安心のため、医師の診療時間節約のために、薬の量が増えていってしまうケースも少なくないのです。

「薬を減らしてほしい」と言ってみる

では、どうすれば本当に必要な薬だけを残して、飲まなくても問題ない薬を減らすことができるのでしょうか。

それは、長くかかっていて、主治医となんでも言える関係になっているなら、その主治医に「薬がずいぶん多くなって飲むのが大変です」と素直に言ってみることです。

たとえば、内科、整形外科、皮膚科など科をまたいでさまざまな診療所にかかっている場合、あなたの主治医といえど、実際にあなたがどれだけ薬を飲んでいるのか知らないことも多いのです。
お薬手帳があるので、それを見ればわかるはずですが、外来が忙しい診療所だと、毎回それを確かめなくなってしまうものです。

なかなか主治医に「薬を減らしてください」とは言えないものですが、逆にそう言える間柄こそが、医師と患者さんの、正しい関係と言えるでしょう。
素直に意見を言える関係を持っていることは、自分自身を守るためにも非常に大切なことです。

しかし、患者側から薬のことを言うと、激怒する医師がいまだにいるのも事実です。
そんなときは、主治医を変えるチャンスと思いましょう。

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プロフィール

米山公啓
米山公啓

1952年、山梨県生まれ。聖マリアンナ大学医学部卒業、医学博士。専門は脳神経内科。超音波を使った脳血流量の測定や、血圧変動からみた自律神経機能の評価などを研究。老人医療・認知症問題にも取り組む。聖マリアンナ医科大学第2内科助教授を1998年2月に退職後、執筆開始。現在も週に4日、東京都あきる野市にある米山医院で診療を続けているものの、年間10冊以上のペースで医療エッセイ、医学ミステリー、医学実用書、時代小説などを書き続け、現在までに300冊以上を上梓している。最新刊は『脳が老化した人に見えている世界』(アスコム)。
主なテレビ出演は「クローズアップ現代」「世界で一番受けたい授業」など。
世界中の大型客船に乗って、クルーズの取材を20年以上続けている。
NPO日本サプリメント評議会代表理事。推理作家協会会員。

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