健康寿命を延ばす「無理しない思考法」

その「のどの違和感」危険かも? 医師が勧めるのどトラブルとの向き合い方

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からだが健康なときには、からだのどこか特定の部位を意識することはありません。
胃が痛くなって初めて、胃の存在が気になるのです。

しかし一度意識しだすと、気になる部位が痛みのある箇所だけにとどまらなくなってしまいます。
いつもと違う感覚がからだのどこかにあり、何かの病気ではないかと気になり始めるのです。そうなると、関係のない他のからだの部分の違和感も、病気のせいではないかと心配になってしまいます。

いわゆる「病気探し」はそんなことから始まります。
のどはちょっとした違和感に気づきやすい部位です。そのため、止まらない病気探しの入り口になりやすいのです。

突然訪れるのどの違和感

ではここで、咽喉頭異常感症という、のどの違和感の原因となる特殊な病気について簡単に解説します。

結構元気にやっていたのに、急にのどが詰まったような気がし始めます。
ネットで調べると、「○○がん」といったような怖い病名が並んでいて、心配になってきます。

まずは耳鼻科に行きます。耳鼻科ではのどの奥まで特殊な器械で覗いてくれますが、何もありません。「気のせいではないですか?」という言い方をされてしまいます。
それでもちっとものどの違和感は取れません。

今度は消化器内科で内視鏡をやって、のどだけでなく、胃の中まで調べてみますが、何もありません。
やはり「気のせいでは?」と、心療内科に行きいろいろ薬をもらいますが、ちっともよくなりません。

大きな病院の耳鼻科に再度受診しますが、やはり異常なしで終わってしまいます。

そんな病気の原因探しを続けて、半年以上経過したころ、なんとなくのどの違和感が取れていきます。
あんなに気になっていた症状がいつの間にか消えてしまいました。

これが一般的な咽喉頭異常感症という症状と経過です。
結局、原因はわからないまま症状が消えていくのです。

まずはやはり専門医に診断を受けること

もちろん、咽頭部の違和感があっても咽喉頭異常感症なので何もしなくても治る、だからほっておいていい、ということではありません。
やはり原因を調べる必要があります。
咽喉頭異常感症という診断を下すには、いろいろ調べても原因が見つからないというのが前提です。

咽頭部の違和感は、咽喉頭炎、食道や下咽頭の悪性腫瘍、甲状腺の病気、脳や脳神経の病気といったように、多くの原因が考えられ、中には早期の治療が必要なものもあります。
だからこそ、さまざまな角度から診察を受けていく必要があるのです。

このように、のどの違和感は気にしすぎと考えられる一方で、重大な病気のシグナルともとらえられることがあります。
そのため、どうしても病気探しのようになり、その間、患者さんの心配が続くことになってしまうのです。

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プロフィール

米山公啓
米山公啓

1952年、山梨県生まれ。聖マリアンナ大学医学部卒業、医学博士。専門は脳神経内科。超音波を使った脳血流量の測定や、血圧変動からみた自律神経機能の評価などを研究。老人医療・認知症問題にも取り組む。聖マリアンナ医科大学第2内科助教授を1998年2月に退職後、執筆開始。現在も週に4日、東京都あきる野市にある米山医院で診療を続けているものの、年間10冊以上のペースで医療エッセイ、医学ミステリー、医学実用書、時代小説などを書き続け、現在までに300冊以上を上梓している。最新刊は『脳が老化した人に見えている世界』(アスコム)。
主なテレビ出演は「クローズアップ現代」「世界で一番受けたい授業」など。
世界中の大型客船に乗って、クルーズの取材を20年以上続けている。
NPO日本サプリメント評議会代表理事。推理作家協会会員。

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