健康寿命を延ばす「無理しない思考法」

その「のどの違和感」危険かも? 医師が勧めるのどトラブルとの向き合い方

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のどのつかえを起こす代表的な病気

では、のどの違和感から一歩進んで、違和感というよりはっきりと「つかえ」があるという症状についてです。
この場合は、さらに他の病気を考える必要があります。

・逆流性食道炎

食道に胃液が逆流することで起こる病気です。胃液の逆流は、加齢や暴飲暴食、肥満、胃酸の分泌過多などが原因になります。
胃液によって食道粘膜が炎症を起こすと、食後にのどのつかえ感や違和感が生じてきます。
食道だけでなく、咽頭や喉頭にも影響がでる咽喉頭酸逆流症という病気もあります。

・カンジダ性食道炎

体調不良によって免疫力が低下すると、食道粘膜にカビの一種であるカンジダが増えて炎症を起こすことがあります。
症状は胸焼け、のどの違和感や痛み、胸のつかえ感、しみるなどです。
他の病気でも同じような症状なので、この病気を疑ってみないとなかなか診断できません。

・食道がん

食道がんは、初期は無症状ですが、進行するにつれて、のどにつかえる感じが出てきます。水分は通っても固形物が通りにくくなってきます。
物がつかえる感じのときは、まずは消化器内科で、内視鏡を受けるべきでしょう。

・鉄欠乏性貧血

貧血とのどの違和感は関係ないように思いますが、貧血が続くと食道に食道ウェブという薄い膜状のものができます。これが飲食物の通りを悪くするので、のどのつかえ感として感じるのです。

怯えすぎないことが大事

さまざまな病気をあげてきましたが、最初にあげた咽喉頭異常感症が、一般的には、咽頭部の違和感を覚えた際に、もっとも可能性が高い病気です。

すでに述べたように、いろいろ検査をしても何も異常がなければ、この病気を疑うことになります。

ストレスや悩みがあると、のどから胸にかけての違和感が出てくるのです。
のどに何か詰まっている感じを訴えます。球が詰まっているようで苦しいと訴えることがあるので、「ヒステリー球」と呼ばれることもありました。
また息がしにくいと言う患者さんもいます。多彩な訴え方をすること自体が、特徴とも言えます。

ストレスが続くことで、交感神経の過緊張状態になり、食道周囲の筋肉が過剰収縮するので起こると推測されています。ですが、本当のところはまだわかっていません。

傾向としては、ホルモンバランスが乱れやすい、30~60歳代の女性に多いようです。

進行していく病気ではないことが理解できると、症状はなんとなく消えていきます。その期間は短いことがほとんどですが、半年から一年かかる場合もあります。

病気の症状は非常にいろいろ出てきます。医師にも理解できないような表現をする患者さんもいます。
症状があるからと言って、何か大きな病気が隠れているとは限らないことを知っておくことが重要なのです。

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プロフィール

米山公啓
米山公啓

1952年、山梨県生まれ。聖マリアンナ大学医学部卒業、医学博士。専門は脳神経内科。超音波を使った脳血流量の測定や、血圧変動からみた自律神経機能の評価などを研究。老人医療・認知症問題にも取り組む。聖マリアンナ医科大学第2内科助教授を1998年2月に退職後、執筆開始。現在も週に4日、東京都あきる野市にある米山医院で診療を続けているものの、年間10冊以上のペースで医療エッセイ、医学ミステリー、医学実用書、時代小説などを書き続け、現在までに300冊以上を上梓している。最新刊は『脳が老化した人に見えている世界』(アスコム)。
主なテレビ出演は「クローズアップ現代」「世界で一番受けたい授業」など。
世界中の大型客船に乗って、クルーズの取材を20年以上続けている。
NPO日本サプリメント評議会代表理事。推理作家協会会員。

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