歳とともに増える悩みごとのひとつに、夜間のトイレの多さがあります。
夜、1回か2回起きてトイレに行くのはなんとか我慢できますが、3回4回になってくると眠れませんし、翌日にも影響してきます。
夜間のトイレの回数が増えるのは、意外なことも影響していて、医師でもわからないこともあるのです。
とはいえ、もし夜間頻尿の自覚が少しでもあるなら、真剣に考えておく必要があります。夜間頻尿が大病のシグナルになっている可能性もありますし、その原因によっては治すことができるからです。
脳卒中や脱水症状の予防のために、「寝る前の一杯の水はからだにいい」と思っている人が多いようです。
しかし、寝る前に水を飲むことで脳卒中の予防になるという事実はなく、あくまでも気分的なことのようです。逆に、夜間頻尿という視点から見ると、寝る前に水を飲むという習慣は直接の原因につながります。加えて、日中の水分摂取過多も夜間頻尿の原因になるので、必要以上の水分摂取を控えることも大切です。
これは、内科医でも見落としている場合が多いことです。
血圧を下げるために処方される降圧薬としてよく使われているのはカルシウム拮抗薬なのですが、これは夜間頻尿を引き起こします。
カルシウム拮抗薬を飲んでいる場合、その14%に下肢にむくみが出ると言われています。そして横になって寝ていると、むくみとして脚にたまっていた水分が心臓に戻ってくるので、夜間多尿の原因になるのです。
またカルシウム拮抗薬は、それ自体が腎臓の血流量を増やすということもあり、夜間多尿の原因となります。
このことを内科医が意識していないことが多いのです。当然患者さんは、降圧薬で夜間多尿になると思っていないので、原因がわからないままになってしまいます。カルシウム拮抗薬を使うと夜間頻尿になる場合があると、主治医はきちんと説明すべきです。
またそれとは逆ですが、高血圧症で使われてきたサイアザイド系利尿薬は、夜間の多尿を改善することがわかっています。
最近糖尿病の治療薬として、SGLT2阻害薬が使われるようになりました。この薬は尿中に糖分を排泄して血糖値を下げようとする薬です。この効能によって多尿がもたらされ、夜間頻尿の原因となります。このことを主治医は患者さんに十分説明しなければいけません。