コンサル会社が異業種人材をかき集めまくる訳

「採用が需要に追いつかない」

コンサル業界の勢いは、まだまだ衰える気配がない。別のコンサル会社首脳は「このままのペースで採用を続けても、需要に追いつかない」と期待をのぞかせる。

調査会社IDC Japanによる国内コンサルサービス市場規模の予測では2024年には1兆円(2020年比約3割増)に達する見込みだ。牽引役となっているのはやはり、DXに絡むデジタル関連のコンサルだ。現在、大宗を占めているデジタル関連以外のビジネス・ITコンサルの分野は、縮小する見通し。コンサル会社の主戦場もデジタル関連に移っていくことは明らかだ。

市場規模拡大の背景について、IDC Japanの植村卓弥・ITサービスグループマネジャーは、「かつてのような部門ごとではなく、業務改革や営業チャネルの改革、新たなデジタルサービスの開発など、全社的なデジタル変革の案件が増えたことが大きい」と説明する。つまり1案件の規模も大きく膨らんできているわけだ。

2020年はコロナ禍で4~6月ごろにプロジェクトが止まり、市場はやや縮小したが、7月以降は急速に回復。それどころか、サプライチェーンの見直しやリモートワークへの対応といった新たな課題が浮き彫りになったことで、クライアントの DXに対する意識がさらに高まった。その結果、「今夏発表する2025年までの予測は伸び率が一層高くなりそう」(植村氏)で、1兆円どころか1兆2000億円程度まで拡大するものとみられている。

就活生の人気も上昇

こうした市場の盛り上がりは、就職活動をする学生たちの価値観をも変化させている。2年前に就活を経験した早稲田大学の卒業生は「ほとんどの就活生がコンサル会社の説明会や選考に参加している」と明かす。コンサル会社に入れば、「仕事でいろんな会社を見られる。若い頃からバリバリ働いてスキルアップすれば、事業会社への転職にも有利に働き、潰しが利くと考える人が多い」(同)からだ。

かつてのコンサル会社といえば、エリートの中でも選び抜かれた人だけが入れる狭き門だった。しかし、近年は「採用人数も多く、滑り止め感覚で受ける人もいる」という。実際、この卒業生も大学3年生の時点ですでに「コンサル会社から内定をもらっていた」そうだ。

就職人気ランキングでも、コンサル会社は上位にランクインするようになった。表を見ていただきたい。これは、東京大学と、早稲田・慶応大学の学生に人気の企業をランキングしたもの。これを見れば明らかなとおり、コンサル会社が上位にずらりと顔をそろえている。これまで就職人気ランキングの上位といえば、商社や銀行、航空会社といった業種が常連だった。それが今や、コンサル会社が取って代わるほど存在感を増しているのだ。

市場が沸騰、それに伴って人材争奪戦も激化するコンサル業界。企業のDXニーズはとどまりそうになく、しばらく活況に沸きそうだ。

『週刊東洋経済』5月15日号(5月10日発売号)の特集は「コンサル 全解明」です。
画像をクリックするとアマゾンのページにジャンプしますを