「意識高いZ世代に戸惑う」上の年代が心得たい事

そんな時に、上司や周囲に望ましいファーストアクションは、相互理解だと筆者は考えている。その部下が仕事で叶えたいことを話してもらい、受け止めること。「貧困問題を解決したい」「カーボンニュートラルな社会を実現したい」など、彼らの成し遂げたいことが今の事業や業務とどんなに距離があることだとしても、まずは前提として、じっくりと耳を傾けてその想いを認めてあげることが大切だ。

多様な価値観を肯定されて育っている。「実力もないのにそんなの無理だよ」と頭ごなしに否定するのはNG。むしろ、「この上司には自分の想いを打ち明けても大丈夫」という心理的安全性の担保がファーストステップとなる。仕事だけでなくプライベートの話までざっくばらんに相談できる関係性を築くのが望ましい。そのためには、上司から自分の弱みやプライベートの部分を開示し、親近感を持ってもらうことも必要だろう。

次に上司や周囲に求められることは、実現したいことの具体化、つまり解像度を上げることと、筆者は思う。いわゆるWILLの具体化ともいえるものだろう。例えば、「社会を動かす経営者になりたい」というゴールがあったとしても、その実態は非常にあいまいであるケースも多い。ここも、だから曖昧ではなく、その背景や、具体化なロールモデルなどを一緒に考えていくのが望ましい。

ポイントは、仮でもいいので「いつまでに」と「どうやって」を決めることとなる。部下の目標を実現するための道のりを一緒に考えられるか。それはキャリアパスのイメージ合わせとなる。

例えば、「働く女性の役に立つ新規事業・サービスをつくりたい」という目標を持つ女性の部下がいたとする。それに対しては「働く女性とは何なのか?」「役に立つとはどういうことなのか?」「新規事業をつくるとは?」を話し合って目標を決めていくような感じだ。

目標を実現する期日を決めるときには、人生のライフステージも意識するのがいいだろう。そうした事情を踏まえ、仮に「30歳までに」と設定したのであれば、30歳でその仕事をするにはどんな状態だったらいいか……と最終のゴールから逆算していき、今の仕事との関連性や意義を一緒に考えていくというのが有効になるはずだ。

WILLの次は、CANを具体化する

いわゆるWILLとの要素接続に加え、CANの具体化についても考える必要があるだろう。成長のマイルストン設定ともいえる。一方で、「将来は新興国の支援がしたい」などのように、部下のやりたいことが今の業務内容と直接的にはつながりにくい場合だったとしても、そのために「どう成長するか(どんな力を身に付けるか/何ができるようになるか)」の対話が欠かせない。

「営業活動を通して社外の人脈をつくる」「今の仕事で圧倒的な業績を出して、管理職に昇進し、多様な人のマネジメントスキルを身に付ける」など、将来の目標につながる短期目標を設定することで、目の前の仕事の意味をあわせていくことがポイントになるだろう。

できれば、その視点を持ちながら、今の仕事だけではなく半年後に担ってもらう仕事のイメージあわせなどもできるとよいだろう。

また、本人の中長期目標を今の仕事と接続するだけでなく、自分自身の仕事・役割が会社や事業が目指すビジョン・ミッションにどう繋がっているかを見せることも大事だ。その意味では、OKRなどの目標管理手法導入の相談も増えたが、社員1人ひとりのミッションの意味を明確に示し、やる気に繋げている会社も多い。

肝心なのは、こうした形式論をたどって、無理やり表面的に納得させるということではなく、中長期視点で本人のキャリアに向き合ったマネジメントができるかどうかだ。