「仕事の借りは仕事で」ではメンタル復活しない訳

ヘコみの外での自己肯定ができると、そうした私たちの心の働きを和らげることができ、違った意見や新しい情報に、よりオープンでいられるようになるのです。

例えば、仕事や勉強で充実した1日を過ごしたときに、友人と意見が異なってもいつもより寛容でいられた。そんな感覚は友人関係の外での自己肯定がすでにされているからこそ起こるヘコみの外の自己肯定によるものと考えられます。

さらに、ヘコみの外の自己肯定で、緊張やプレッシャーも軽減できることがわかっています。

緊張したり、プレッシャーを感じたりするのは、自分の心がなんらかの脅威に晒されたということの現れです。それゆえ、前もってその脅威に晒された心の「顔」以外の分野で自己肯定できていれば、緊張やプレッシャーを和らげることができるのです。

さらに、ヘコみの外での自己肯定のパワーは、そうした一時的な効果だけにとどまりません。例えば、日記をつける習慣などを通して、定期的に自分の価値観を確認、肯定すると、日々の生活の中での継続的なストレスにも立ち向かうメンタルができることもわかっています。

日常的に自己確認や、自己肯定をすることで、心への脅威に立ち向かう心の準備をつねに整えておくことができ、違う意見にもオープンでプレッシャーやストレスにも強いメンタルがつくれるのです。

ポジティブになりたい自分を忘れるためのコツ

さて、うまくヘコみの外での自己肯定を実践するにあたって、絶対に注意しておかなくてはいけないことがあります。それは、なんと、ヘコみの外での自己肯定をしようとして、むりやり自己肯定や自己確認をすると、自己肯定の効果が下がってしまうということです。

しかし、これはちょっと、絶望的にも思えます。ヘコんだときに自己肯定したい。もしくは、将来ヘコみに耐えられる強いメンタルをつくりたい。そう思って、例えば、仕事のヘコみを解消するために自分の価値観を確認してみる。そうした意識的な自己肯定だとヘコみの外での自己肯定の効力が発揮されにくくなるということを意味するからです。

いわば、効果的なやり方があるというので、やってみようとするのだけれど、実際にやってみても、その効果が得られない。

しかし、大丈夫です。この点に注意しながら、十分にヘコみの外での自己肯定の力を発揮する方法があります。

まずは、ルーティン化を心がけましょう。

必要なときに意識してむりやりすると、ヘコみの外での自己肯定や自己確認の効果が出ない。であれば、日頃から自分の習慣の一部として取り込む。毎日のありふれた生活の一部として自己肯定や自己確認ができる習慣をルーティン化しておくことで、特定のときに意識する必要なしに「ヘコみの外での自己肯定」が自然とできているようにするのです。

意識してたまにやるのではなく、いつも無意識にやっている状況がつくれるように、ヘコみの外での自己肯定のルーティンを自分の習慣に組み込んでいきましょう。

お勧めのルーティンは、やはりなんと言っても、その日にあったことや思ったことなどを書き留めておく、ジャーナリング(日記)です。

ジャーナリングでポジティブに

ジャーナリングは心理療法の一つの手段として長きにわたり使われてきており、心の健康を保つツールとして、その効果は脳科学のレベルでも実証されてきました。さらに、脳のワーキングメモリーが活性化されたり、睡眠の質が上がったりするなんていう効果もあります。そんな「万能の心の健康ツール」であるジャーナリングは、もちろん、自己肯定感にも抜群の効果を発揮します。

自分の考えを書きだすことによって、自分自身と向き合い、自己確認、さらには、自己肯定につながる。いろんな心や体の健康、自己肯定感などのすべての効果を一気に欲しい方にお勧めのルーティンです。

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ジャーナリングは少しハードルが高いという方も必要以上に構えることはありません。数行でも構わないので、自分の感じたことを箇条書きにしてみましょう。

特に、脅威に晒されながらも、いつもポジティブに感じていたい自分の「顔」があれば、それ以外の「顔」のことについて、毎日書いていくのが良いでしょう。

例えば、仕事でポジティブでいたいなら、友人関係や趣味での出来事など仕事以外のことを書き留めるように習慣化していくのがお勧めです。または月曜日は仕事、火曜日は家族、などと曜日などによって定期的にトピックを変えられるようにするのもいいでしょう。

このように、1日の終わりに日記を書くことは、「ヘコみの外の自己肯定」効果で、仕事以外のところで自己肯定できるようになり、仕事での心の脅威に立ち向かう力を与えてくれるのです。