高級化の流れを変える「ブルガリホテル」の全貌

「ブルガリ ホテル 東京」 は高級ホテルの定義を変える存在になりそうだ(写真:Bulgari Hotels & Resorts)
せきを切ったように押し寄せるインバウンド。彼らを囲い込むべく、ホテルは高級化路線を強化している。『週刊東洋経済』5月8日(月)発売号では「ホテル富裕層争奪戦」を特集。ブルガリホテルの全貌、帝国ホテルの逆襲、現場の人手不足や耐震改修が必要なホテルなど、ホテルの「光と影」をリポートする。

映画『プラダを着た悪魔』などで知られるハリウッド女優のアン・ハサウェイ、日本の人気俳優の山下智久、そしてモデルのKōki,、森星。豪華スターが一堂に会したステージに向けて、詰めかけた報道陣のカメラフラッシュが一斉にたかれた。

週刊東洋経済 2023年5/13特大号[雑誌](ホテル 富裕層争奪戦)
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2023年4月4日。三井不動産が開発した東京駅前の複合ビル「東京ミッドタウン八重洲」に「ブルガリ ホテル 東京」が開業した。冒頭は同日に行われたオープニングパーティーの一場面だ。

ブルガリは1884年にローマの銀細工職人、ソティリオ・ブルガリが創業した宝飾品ブランド。そのブルガリがザ・リッツ・カールトン・ホテルを傘下に持つアメリカのマリオット・インターナショナルと合弁会社を立ち上げたのは、2001年のことだ。

この合弁会社は2004年にミラノ、2006年にバリ島でブルガリブランドのホテルをオープン。その後、ロンドン、北京などが続き、今回の東京が8軒目となる。

ラグジュアリーブランドが手がけるホテルに、「アルマーニ ホテル」「パラッツォ・ヴェルサーチェ」などがある。その中でも、最も積極的に展開しているのがブルガリ ホテルだ。

ブルガリGのジャン-クリストフ・ババンCEO(中央)(撮影:尾形文繁)

スイートはジムも完備

ブルガリ ホテル 東京は、日本におけるラグジュアリーホテルの定義を一変させる可能性がある。

ミッドタウン八重洲の40~45階に位置し、全98室のうち23室がスイートルーム。中でも、ブランド名を冠した「ブルガリ スイート」は、国内最大級の400平方メートル超の広さを持つ。ブルガリ スイートは3つのリビングルーム、キッチン、ジムを完備しており、宿泊費は1泊400万円超とされる。

ブルガリ ホテル 東京は、東京ミッドタウン八重洲に入居(写真:Bulgari Hotels & Resorts)

開業当日のプレス発表会の場で、ホテル側が繰り返し使っていた言葉は「クラフツマンシップ」。その言葉が示すように、館内の随所に、イタリアの伝統的なデザインと宝飾品を扱ってきたブランドならではの視点が感じられる。

エントランスの車寄せにはローマの伝統的な石畳を採用。40階にあるバイタリティプールの壁は、古代ローマのカラカラ浴場の床をモチーフにしたデザイン(ブルガリのジュエリー「ディーヴァ ドリーム」の扇模様)となっている。

「宿泊費はいったいいくらになるのか」。ブルガリ ホテル 東京の客室単価は、開業前からホテル関係者の耳目を集めていた。

超がつく強気の価格

ブルガリ ホテル 東京のホームページを確認すると、「スーペリアルーム」(51平方メートル)でも5月の連休明けから9月下旬まで、31万円台~(大人2名1泊、2023年4月16日現在)。

この金額は日本のラグジュアリーホテルでは、超がつく強気の設定だ。下表の「日本の主なラグジュアリーホテル」を見てほしい。ここでは40室以上を有する国内ラグジュアリーホテルのベーシックな部屋の金額や、1平方メートル当たりの単価を示している。