学びを「活かせる人」「そうでもない人」の大きな差

ビジネスにおける「学び」の幅も広がる中、「学ぶ力」の重要性と、「学びを活かせる人と、そうでもない人の差」について解説します(写真:jessie/PIXTA)
リモートワークや副業が認められるなど、ここ2、3年で働き方が大きく変化した令和の今では、昭和・平成の「ビジネス環境」や「考え方」を前提とした仕事術では、Z世代の若手社員にとってマッチしなくなっています。
では必要なのは何か。多くのビジネスパーソンを教育してきたグロービス経営大学院の田久保善彦氏と中村直太氏は、より良いキャリアを築くために「Will」「Skill」「Network」の3要素が欠かせないと指摘します。
本稿では『読めば3年後の未来に先回りができる 入社1年目からの「働き方」』より一部抜粋・再構成してお届け。「学びを活かせる人と、活かせない人の差」について解説します。
 

「学ぶ力」を一度身につけてしまえば人生が豊かになる

社会はいま、非常に速いスピードで変化しています。皆さんは実感がないかもしれませんが、一昔前までは10年かけなければ次のステージに進まなかったようなことが、いまではほんの1年で変化し、前に進んでしまうような世の中です。

それに伴って、私たちが学ばなければならないことも急激に増え、その範囲も広がっています。例えば、いまビジネスパーソンの中には、経営・ビジネスに加えてデザインやアートを学ぶ人が増えています。一般的なビジネスパーソンがデザインやアートを勉強するようになるとは、20年前に誰が想像したでしょうか。

ビジネスの現場では、市場リサーチを行い、そこから解決策を導くという手法が用いられています。最近ではこれに加え、デザイナーやアーティストが持っている感性や創造力などをビジネスの課題を解くために活用したいというニーズが高まっているのです。ビジネスの仕組みや人々の価値観はこの先も大きく速く変わっていくでしょうから、学ばなければならないこと、考えなければならないこと、感じなければならないことの幅はますます広がっていきます。

「学ぶ力」の重要性は、オックスフォード大学が発表した「The Future of Skills Employment in 2030」の中でも語られています。このレポートでは「2030年の雇用に求められるスキル・知識」がランキングされていて、その中で「戦略的学習力」が1位に選ばれました。戦略的学習力とは「自分にとって最適な学びを見極め、効率的に知識やスキルを身につける力」、つまりは「学ぶ力」のことを言っているのです。

皆さんは「ただ何となく身につけたい」という理由で勉強をして、途中で挫折した経験はありませんか。スキルはたやすく身につくものではありません。明確な目的意識がないと、中途半端に終わってしまうことが多いのです。

多くの方が「これからの時代は英語が話せるようにならなければ」と考えたことがあると思います。中には、教材を買ったり、英会話学校に通ったりしたことがある人もいるでしょう。しかし、自分が満足できるレベルで英語を話せるようになった人は限られると思います。

またある日、何かしらの資格を取得しようと講座を申し込んだものの、段ボール箱いっぱいの教材が送られてきて、取りあえず部屋の隅に置いたきりになってしまい、テキストを開いたこともないといった経験をした人もいるかもしれません。どうして身につかなかったのか、始めることもできなかったのか。それは、どちらも必要に迫られていないからです。

ここで1つ質問をします。

「あなたは、何のためにそのスキルを身につけたいのですか?」

何かスキルを身につけたいと思うのであれば、「目的」をしっかり確認することが大切です。まず自分がどういうキャリアを歩みたいかを考え、「そのために必要なものは何か」「どこに力をつけなければならないのか」「自分のステップアップには何が必要なのか」を明確にしてみましょう。それが本当に身につけたいスキルのはずです。それをはっきりとさせてから、その勉強に取り組んでください。