このデータを見た部長は、薄々感じていたことがデータで裏付けられ、納得した様子でした。もちろん、社内的にもこの事実はショックです。しかし、事実なのだから、誰も文句は言えません。しぶしぶかもしれませんが、納得するしかないのです。
その後、どうして改革が必要かを社内に語る際にも、このデータは重要な事実として引用されました(なお、このデータを使ってクライアントの部長に話をしたのは、一年目のわたしではなく、マネジャーです)。
その後、みんなこの数字に興味をもってくれました。わたしが分析したようなデータをすぐに取得できる簡単なシステムをつくれないか、という依頼もあり、実際につくりました。
そのシステムは、その後の本格的なマーケティング分析システムを構築するきっかけともなりました。その過程で、わたしは、マーケティングに関する数字の取得と分析について任されるようになり、はじめてクライアントの前で「数字については、彼が担当します」と上司に言ってもらえたのです。
わたしは、特にたいした経験もなければ、経営に関してはまったく何も知らない単なる新人でした。しかし、顧客が知らなかった事実を数字で示すことによって、価値を認めてもらえたのです。
このように、動かせない事実こそが、新人にとって、もっとも有効な武器となります。
たとえば、社内で、非効率だったり、理不尽だったり、無駄だと思えることがあって、それを改善したいと思っているとしましょう。そういうときに、
「○○は非効率だと思います。変えるべきです。危機感をもってください」
こういう言い方をしてしまうと、人には伝わりません。相手の危機感を煽ろうとしても、逆効果です。なぜ新人がそんな偉そうなことを言うのか、と思われてしまいます。
だから、新人であればあるほど、事実を拾ってこないといけないのです。
いくら新人の提言であっても、それが事実ならば、聞いてもらえます。
意見は封殺されることがありますが、事実は封殺しようがありません。
「○○がおかしい」と思ったら、まず、事実を集めましょう。集めるときは、大上段にかまえたものではなく、具体的なものを集めるようにします。
たとえば、街角で調査員がカウンターをもって数えている、あのデータのように、ウェブサイトや新聞に載っていない、あなたが数えなければ決して数えることができないようなデータこそが、有効です。
誰が、何を、何回したのか。
どれが、いつ、何回利用されているのか。
こういう数字を集めてきてください。それこそ、カウンターをもって現場調査をしてもいいでしょう。
もしあなたが集めた数字に意味があれば、少なくともそれが完全に無視されることはありません。そして、そういう地道なことをするのが、新人の役割でもあるのです。