商店街の洋品店や書店が潰れそうで潰れない理由

街中の小さな町の洋服屋や文具屋、本屋を想像してみてください。

どのお店も、ショッピングセンターや大型専門店に顧客が流れ、厳しい経営を強いられています。そんな状況でも営業を続けているお店があるのは、地元の学校指定の学用品(学生服、体操服、鞄、文房具、教科書など)を取り扱っているためです。これが業界の外からは見えない、稼げるポイントです。

外からはなかなか見えないけど実は儲かっている――その最たる例は、東京・大田区の蒲田にあります。

大田区は「ものづくりのまち」として知られていて、区内には実に3500もの工場がありますが、そのほとんどはネジのような小さい部品の加工を専門に請け負っています。市場規模は数億円と小さいものの、市場をほとんど独占しています。

そもそも、小さい市場に大手は参入してきません。わざわざ設備投資するうまみがないためです。職人技が光る業界でもあるので、人を育てるのに時間もかかります。だから、「大きなメリットもないから、蒲田のあの親父にやらせておこう」となります。

当の本人も、ここが空いている、自分たちが勝てる市場だとわかっています。その上で、自社の独占状態を維持するためにちょっとした戦略も駆使します。

居酒屋で「儲からない」とグチるのです。「ウチは儲からなくて大変だよ」と言うことで、「この業界で仕事しちゃダメだよ」と暗にアピールし、参入障壁を作っています。

「町工場の親父は実はお金を持っている」のは界隈では有名な話です。街を歩けば「あそこはどうやって儲けているんだろう?」と不思議に思う個人商店はたくさん見つかりますが、どこも稼いでいる同業他社と同じことを、別の場所でやっているのです。

成功する最短の道とは

お金を稼げるポイントを心得ている人たちは、「成功している誰かのやり方を、ほかの空いている市場でやる」のが最短の道だとわかっています。そこに、新しい商品やサービスで参入しようという考えはありません。非効率で不確実=儲かりづらいからです。

その理由を少し考えてみましょう。

1つは、現代では新しいものを生み出すのが難しいこと。

「チキンラーメン」を発明した日清食品の創業者・安藤百福さんは、1958年当時、まだ世の中に存在しなかったインスタントラーメン(チキンラーメン)を開発して大成功を収めましたが、モノがあふれる今の時代にこれと同じことを再現するのは非常に難易度が高いといえます。

新しい=売れるではない

もう1つは、仮にiPhoneやChatGPTのように突き抜けた商品を開発できたとしても、それが売れるかどうかは別問題だということです。

新しい商品のマーケットがあるかどうかわからないので、仮説と検証を何回も繰り返さなければなりません。市場調査や認知させるための広告費用もすごくかかるでしょう。

新しい健康成分を発見して商品化したとして、その成分がいかに健康にいいのかを広めないとニーズは生まれません。

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市販のヨーグルトのパッケージには「ガセリ菌SP株」とか、「LB81乳酸菌」といった体によさそうな(?)成分を前面に出した売り文句が並んでいますが、これらは大手メーカーが莫大な資本と時間を投下して市場調査や販促をした結果です。

おまけに、そのようなキーワードは定期的に新しいものに取って代わります。売れるまでのコストがいかに膨大なものか、想像に難くないでしょう。

大手ではない我々には、莫大なコストを払う余裕はないはずです。そんな遠回りをする必要はなく、すでに成果の出ている検証済みのものだけを使えばいいのです。

この世にまだ存在しない新しい商品を作るのは一部の天才や研究所を持ち、日夜新しい商品を作り続けている大手に任せましょう。