ロイホ絶好調の裏で絶不調のすかいらーく…ガストの高価格メニュー投入が完全に失敗

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ガストの店舗(撮影=編集部)

 ロイヤルホールディングス(HD)が展開するファミリーレストラン「ロイヤルホスト」が絶好調だ。2月の既存店売上高は、前年同月比3.9%増と大幅プラスだった。1月は3.8%増だった。2019年12月期は前期比3.7%増と大きく伸びている。同期は客数が前の期並みの一方で客単価が3.6%増と大きく伸びた。

 一方、ファミレス「ガスト」などを展開するすかいらーくHDの業績は冴えない。同社の1月の既存店売上高は2.4%減とマイナスだった。19年12月期は0.3%増の微増にとどまっている。

 すかいらーくHDは今年1月から4月にかけて24時間営業の全廃と深夜の営業時間の短縮を実施する方針で、その影響が出た。また、昨年9月から約3200店の国内全店を全面禁煙にしたことや、低価格路線のガストで高付加価値メニューを投入しメニュー構成を高価格帯に寄せたことなどが裏目に出た。

 営業時間の短縮や禁煙化は業界全体に要請されていることなので、それによる影響は仕方がない面がある。だが、高価格帯に寄せたことによる影響は、すかいらーくHDの戦略の失敗といえる。同社は失敗を認め、今期(20年12月期)はメニュー構成を見直して低価格メニューを強化するという。

 一方でロイホは高付加価値メニューの投入が功を奏している。19年3月のグランドメニューの改定で国産の黒毛和牛や真鯛など素材にこだわった新メニューを加えたほか、高級食材のオマールエビを使ったメニューを期間限定で販売するなど、19年も継続して高付加価値メニューの投入に力を入れた。

 メニューの高付加価値化では、ロイホが成功しガストが失敗したわけだが、こうした違いが生じたのは、それぞれの顧客ニーズに違いがあるためだ。

 ロイホはファミレスのなかでは高級路線を歩んでいるが、2010年代前半ごろから景気回復が続くなかで、ターゲットとする比較的裕福な層が「多少高くてもおいしいものを食べたい」という欲求を強めたため、ロイホの存在感は高まった。

 一方、ガストがターゲットとする層は節約志向を弱める気配を見せていない。むしろ、昨年10月の消費増税で節約志向を強めている感さえある。そういった最中に高価格帯に寄せたため、客離れを招いてしまった。ガストがターゲットとする層は、何よりもまず価格を気にする傾向がある。そういった層は価格が高くなってしまうと、多少おいしさがアップしても見向きもしなくなる。ガストではこういった人が続出した。ロイホとガストの高付加価値化はこうして明暗が分かれてしまった。

 ロイホは店舗改装にも力を入れている。19年は全店の約15%にあたる32店で実施した。ロイヤルHDはロイホで積極的な店舗改装を実施して収益性を高める考えを示している。18年も23店で実施した。

 店舗改装で居住性が高まれば集客が見込める。これで成功したのが、日本マクドナルドだ。同社は18年まで数年かけて全店舗のうち9割を改装などで「モダン」店舗にしている。マクドナルドは14年の鶏肉偽装問題で業績が大きく悪化したが、その後は積極的な店舗改装や接客サービス強化が奏功し、客数増につながった。そして19年度に全店売上高が創業以来最高になった。既存店売上高は15年12月から今年1月まで50カ月連続で前年を上回っている。これらの立役者のひとつが店舗改装なのだ。店舗改装で売り上げは上がる。

「選択と集中」が奏功したロイホ

 ロイホが好調なのは「選択と集中」を行ってきたことも大きい。ロイホは深夜客の減少に対応するほか、働く環境を整備するために24時間営業の店舗を減らしてきた。17年には全廃している。これにより深夜に人員を配置しなくて済むため、客数が多いランチ・ディナータイムの人員を強化することができた。これに加えて、メニューの高付加価値化や店舗改装が奏功し、同時間帯の客数が増加したほか、客単価の上昇につながったという。ロイホは深夜の需要ではなくランチ・ディナータイムの需要を“選択”し、そこに経営資源を“集中”投下したことが奏功した。