中国、香港の自由剥奪で西側と全面対立…共産党幹部自ら資産逃避で国際金融センターを破壊

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中国の全人代の様子(写真:新華社/アフロ)

 5月28日、全人代(全国人民代表大会)最終日。世界中が注目したのは「香港国家安全条例」が採決されるかどうかだった。

 日本のメディアは「香港安全法」と書いたが、香港基本法への追加条項であって、同23条は「分裂や政権転覆の動きを禁じる法律を香港政府自らが制定しなければならない」としているための追加条例だ。ゆえに、この稿では「香港国家安全条例」とする。

 米国は強い語句を選んだ対応をとる。直前にも、マイク・ポンペオ米国務長官は「横暴かつ破滅的」で「香港が保障された高度な自治の終焉の前兆だ」と強く非難していた。しかし、全人代で香港国家安全条例はあっさりと採択された。賛成2878、反対1。棄権6、無効票が1だった。

 同法は事実上の「治安維持法」である。この反動的措置によって、中国は西側すべてを敵に回した。これまでにも香港の知識人や若者は反対を表明してデモ、集会を連続開催してきた。直前の27日にも、動きを察知したポンペオは「香港では中国政府が約束した自治が維持されていない」として、「もし採択されたら、従来香港に供与してきた特別措置を剥奪する」と牽制を加えていた。

 米国は国際金融センターとしての香港に対して税率などで特権的な地位を与え、駐在米国人は8万を超える。英国、カナダ、オーストラリアの外相は連名で反対の立場を明確にし、EU(欧州連合)議会も「香港基本法を遵守すべき」と批判した。

吹き荒れるチャイナ・バッシング

 米国は実際に制裁準備に入った。英国もこれまで華為技術(ファーウェイ)の扱いに曖昧だった態度をガラリと改め、中国の5G排斥に舵を切り替えた。クリス・パッテン前香港総督は「中国は香港を裏切った。西側はこの中国の無謀を冷笑しているだけでは済まされない」と語気を強めた。パッテンは1997年7月1日の香港返還直前まで香港総督を務めた。

「一国二制度を50年保証するとした1984年の『英中合意』を無視し、香港基本法に謳われた2047年までの香港の高度の自治の保障、言論の自由を踏みにじる暴挙」と英国が批判のオクターブを上げ、英国籍パスポートを持つ香港人の優遇策延長を確約したことは注目すべきだ。香港の旧宗主国だけに、発言に重みがある。

 昨年11月にドナルド・トランプ米大統領が署名し成立した「香港人権民主法」では、「香港の高度な自治が維持されない場合、中国は義務を履行していないとして、特権を剥奪できる」と明示してきたのだ。それを無視する習近平国家主席の暴慢さは、米国がコロナ禍で痛めつけられているので、チャンスと踏んだからだ。

 米国におけるコロナ死者が10万人を超えた。トランプ政権は「covid 19」とか「新型肺炎」とかの曖昧表現をせず、ずばり「武漢コロナ」「中国ウイルス」と呼称してきた。米議会にも米国の左派メディアにも、チャイナ・バッシングが吹き荒れている。

 中国は即座に強い反論を繰り出した。趙立堅・外交部報道官は「いかなる外国の干渉も受け入れない。外部勢力が香港に干渉する間違った行動を取れば、対抗措置を取って反撃する。これは中国の内政問題だ」と強調した。

中国・全人代の3つの論点

 さて、全人代の総括だが、実はほかに3つの大きな論点がある。

 第一は、GDP(国内総生産)成長率の目標値が明示されなかったこと。第1四半期はマイナス6.8%と報告され、IMF(国際通貨基金)は通年で中国の経済成長は1.5%になると予測した。

 しかし、その程度で済むのか? 雇用が特に懸念され、李克強首相は最終日の記者会見で「9億の労働者人口、雇用を守り、雇用機会を創造する」と釈明に追われた。