1兆円投下の三菱スペースジェット開発、失敗の研究…三菱重工と外国人の技術者が対立

 国産ジェット事業の凍結を受け、新たな中期経営計画を発表した。24年3月期には売上高にあたる連結売上収益は4兆円(21年3月期予想は3兆7000億円)、本業のもうけを示す事業利益は2800億円(同500億円)、事業利益率7%(同1%)を目指す。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって航空需要は急減。脱炭素の流れを受けて石炭火力発電事業が低迷しているため、コスト削減を急ぐ。まずMSJ事業費用の削減で1200億円を捻出するほか、国内外で合計5000人規模の削減・配置転換や拠点の統廃合を進める。経営資源を次世代エネルギーなどの分野に振り分ける。1800億円を投じ、水素を使ったガスタービンや二酸化炭素回収などの設備を開発。31年3月期には1兆円規模の売り上げを目標にしている。

 連結事業利益の6割を占めるドル箱だったガスタービンなどの火力発電設備事業は、環境志向の高まりで厳しい冬の時代を迎えている。三菱重工はMSJ事業の失速と火力発電設備の需要減のダブルパンチに見舞われているのが痛い。

スペースジェット事業は822億円の赤字

 20年4~9月期の連結決算(国際会計基準)は売上収益が前年同期比11.7%減の1兆6586億円、事業損益は586億円の赤字(前年同期は743億円の黒字)、最終損益は570億円の赤字(同292億円の黒字)だった。

 事業損益段階で、原子力や航空機エンジンを含むエナジー事業、工作機械や製鉄機械などプラント・インフラ事業、航空・防衛・宇宙事業が赤字だった。カナダのボンバルディア社から買収した小型ジェット旅客機事業の減損を含め、スペースジェット事業の損失が822億円に達したことが利益を圧迫した。

 21年3月期通期の連結売上収益は前期比8.4%減の3兆7000億円、最終利益は77.0%減の200億円を見込む。売上収益は従来予想の3兆8000億円から1000億円下方修正し、最終損益は収支トントンの予想から200億円の黒字へと上方修正した。最終利益を確保できるのだろうか。

(文=編集部)