リモートワーク前提時代、従来の人事評価は通用せず…“役立たず”化するマネージャー層

「先ほど申し上げた通り、マネジメントの基本は手持ちの戦力の把握で、『使えない』と呼ばれるオッサンだって配置次第では『使える』人材に化ける可能性はあるわけです。日本企業の人材育成はジェネラリスト志向が強く、本人が本来向いていない仕事をやらされているケースも多い。そこが企業としての工夫のしどころというわけです。ある程度の期間で成果がでなければ、配置転換してなんとか可能性を一緒に探る姿勢がなければいけません。

 キレイゴトのように聞こえるかもしれませんが、リモートワーク時代ではSNSによる評判も無視できず、社員に寄り添う姿勢をまったく見せない企業は社会的評判を失う時代にもなったのも事実なのです」

安易なクビの切り方はリスク

 コロナ禍による業績悪化で、従業員を解雇する際の企業は後を絶たないが、解雇の仕方が話題になった例も少なくない。

 米配車大手のウーバーは昨年に全従業員の14%に当たる3500人の解雇を発表したが、在宅勤務している対象者にオンライン会議のZoom(ズーム)を通じて「今日が皆さんのウーバー勤務の最後の日となる」と突然伝え、ひんしゅくを買った。

 一方で、民泊サービスのエアビーアンドビーは、全従業員の25%に当たる約1900人の解雇を発表した際、CEOが経営状況についての詳細を提供するなど説明責任を果たし、追加給与なども支払うという手厚い対応をとったことで評価を上げた。

 確かに、企業側に余裕があるかないかの違いもあるため、一概にはいえないが、世の中が厳しい状況であるため、一層、企業としての本質が現れるともいえる。一度「本質的に悪い企業」だとみなされてしまえば、企業の社会的責任が問われるようになった今、企業価値自体の低下につながり、中長期的に見てマイナスになることは間違いない。

 リモートワークは確かに、日本社会にとって馴染みのない働き方ではある。ただ、コロナ前の世界には戻ることが事実上不可能な以上、対応しなければならない。藤川氏はこう話す。

「日本人は前例がないというのが苦手ですが、逆にほかがやっていないから優位に立てるというふうに発想転換できた企業や人は、強みを発揮できる世の中になったといえます。小さくリスクをとっていくことが大きなリスクを避けることにつながるということを、リモートワーク導入ということから実感し始めるいい機会にしてはいかがでしょうか」

 いつの時代も変化に対応できた集団が生き残ることは変わらない。リモートワーク拡大という日本社会での大きな契機にどう向かい合うかが試されている。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

リモートワーク前提時代、従来の人事評価は通用せず…“役立たず”化するマネージャー層の画像1●松岡 久蔵(まつおか きゅうぞう)
Kyuzo Matsuoka
ジャーナリスト
マスコミの経営問題や雇用、農林水産業など幅広い分野をカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや文春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。ツイッターアカウントは @kyuzo_matsuoka

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