ダイソーと真逆、セリアが頑なに「100円均一」を続けられる秘密…多くの固定客獲得

キャンドゥが15年に『OHO!HO!(オホホ)』という、500円から1000円くらいの価格帯の生活雑貨ブランドを展開したことがありました。ダイソーも18年から300円以上の商品を扱う『THREEPPY(スリーピー)』というブランドを展開しています。これらの動きには、のちに高価格帯商品を100円ショップで展開していくときのリサーチ的側面もあったはずです。もちろん、購買層も違うので一概に“すべてそのため”とは言い切れませんが」(同)

 なぜ、こうした業界の動きのなかで「セリア」だけが従来の100円均一にこだわり続けているのか?

「シンプルな理由ですが、他のブランドが高価格帯に踏み切ったからでしょうね。つまり差別化が目的ということです。そもそもセリアというブランドは、100円ショップ業界のなかでもデザイン性の高さを常に意識した商品展開を続けており、それによって固定ファンも多く獲得してきています。ですが、こうした固定ファンの根底には“安くてかわいい雑貨だから”という購買理由があるものと推察できる。かわいい雑貨を扱う中価格帯のお店はほかにたくさんあるので、セリアはあくまで手に取ってもらいやすい低価格設定にこだわっているということではないでしょうか」(同)

 セリアがこうした戦略を続けられるのには、同社が他の100円ショップチェーンとは違う一手を打っていたことが影響しているようだ。

「多くの100円ショップは顧客の来店頻度を高めるために、食品も取り揃えているんです。実際ペットボトル飲料やスナック菓子などよく見かけますよね。でも近年はより安価なドラッグストアが力を増してきたことや、原価率の高さに対して保管コストや廃棄コストもかかるため、食品は経営を圧迫しているのです。しかし、今さら一気にやめるにしても、そのための費用がかなりかかってしまうので、ある種惰性的に続けている節があります。

 ですが実はセリアは、棚ぼた的にこうしたジレンマから逃れられたのです。というのも当初ダイソーなどが食品を扱う路線に舵を切ったとき、セリアも続こうとしたのですが食品の利益率が低い点や、セリアが出店していた立地の多くにスーパーが併設されていたことなどもネックになり、あまり食品を充実方向に向かわなかったんです。だからこそ、デザイン性の強化など“我が道を行く”ことに専念していたのでしょう」(同)

“100均”にこだわるよりも品質と種類が重要?

 セリア、そしてその他の100円ブランドのこうした舵切りは、消費者にどのような影響を与えるのだろうか。

「数百円の商品が増えたところで、消費者的にはさほど気にならないかと思いますし、高いからと客離れすることもないでしょう。というのも1000円、2000円の商品が増えれば別ですが、300円や500円程度であれば、安いことには変わらないからです。消費者としては、“安くて使える商品がどれくらい揃っているか”が最重要なわけですからね。

 そのため、今後も高価格帯が増えていく傾向は続いていくでしょう。100円ショップのライバルはドン・キホーテやホームセンターになっていくかもしれません。重要なのは、値段に見合った品質を維持できるか。500円商品であれば100円商品の5倍の価値があると思わせる品質は必要不可欠ということです。

 そしてセリアに関していえば、どこまで100円均一を堅持し、今の流れに抗っていけるかかに注目ですが、ブレずに100円均一を続けることはブランド価値をさらに高めてくれることにつながるかもしれませんね」(同)

 不況の影響が100円ショップ業界を大きく変えている今、セリアの下した決断が吉と出るか凶と出るか、今後も目が離せない。

(文=A4studio)