幼児期~小学生時の読み聞かせ・読書、その後の「学力」を大きく左右…実証的データで判明

 一方、あまり読書をしない子は、語彙力が低いため本を読むことが苦になり、あまり読書を楽しめない。その結果、なかなか語彙力が高まらず、読書嫌いになっていく。まさに悪循環だ。

 こうして、読書を楽しみ語彙力を高めるとともにさまざまな知識・教養を身につけていく子と、あまり読書をせず語彙力が乏しく知識・教養も乏しい子に分かれていく。

 2歳前後の幼児では、自分で読書することはできない。その場合は、本をよく読むかどうかというより、読み聞かせをよくしてもらっているかどうかが問題となる。読み聞かせの効果に関しても、多くの研究が行われている。それらの研究によれば、読み聞かせを始めた時期が早いほど、また読み聞かせの頻度が高いほど、語彙力が高いといった傾向がみられる。

  読書量と語彙力の関係については多くの調査研究が行われているが、幼児期から児童期の子どもを対象とした研究をみても、中学生や高校生を対象とした研究をみても、大学生や大学院生を対象とした研究をみても、どの年代でも一貫して読書量の多い者ほど語彙力が高いといった傾向が示されている。

 このようにみてくると、独力による読書であっても、読み聞かせによる間接的な読書であっても、読書経験が語彙力を高めるのは確かなようだ。

読書が読解力を高める

 第2に、読書によって読解力が高まるということがある。学力を高めるには、教科書や参考書の文章を読解できることが最低限必要である。だが、数年前に衝撃的なデータが公表された。中学生の5割が教科書の文章を理解できないというものだ。そこで今どきの子どもたちの読解力の低さが問題視されるようになったのである。

 文章を理解するには。語彙力とともに読解力が求められる。言葉をたくさん知っているほうが文章を理解しやすいが、文脈を読み取る力もないと文章の意味を十分理解することができない。

 その読解力にも読書が効果をもつことが、多くの調査研究によって示されている。たとえば、心理学者の猪原敬介たちが小学校1年生から6年生までの児童を対象に実施した調査でも、読書量が多いほど語彙力も読解力も高いことがデータで示されている。言語学者の澤崎宏一が実施した大学生における読書習慣と読解力についての調査でも、子どもの頃から現在までの総読書量が文章理解力と関係していることがデータで示されている。

 注目すべきは、高校時代や大学時代の読書量より、小中学校時代の読書量のほうが、大学生の文章読解力に強く関係していることだ。自分では本を読めない幼児期における親による読み聞かせが、子どもの読解力を高めることもわかっている。幼児期から小学校中学年まで追跡調査した研究によれば、幼児期に親からよく読み聞かせをしてもらった子どもは、あまり読み聞かせをしてもらわなかった子どもよりも、小学校4年生になったときに読解力が高いことが示されている。

 このように読書経験が語彙力や読解力の向上につながることが、多くの研究によって証明されている。そうしたメカニズムが、読書が知的発達を促進するということの背景に働いているわけだ。

 こうしてみると、読書することが学力向上につながるというのは本当のようだ。教科書の文章を読解できないのでは、学力向上は望むべくもない。子どもの将来のためを考えたら、幼いうちから絵本を与えたり、本や絵本の読み聞かせをするなど、読書に馴染ませるような教育的働きかけが欠かせない。そのために親としてもちょっと頑張ってみる必要があるだろう。

(文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士)

●榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士

1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『伸びる子どもは〇〇がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』『ビジネス心理学大全』(以上、日経BP)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『教育現場は困ってるに変更』(平凡社新書)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)など多数。