電気料金も食品も凄まじい価格高騰で消費税減税論…実は店側は即日対応可能?

年金支給者に5000円より消費税減税のほうが効果的

ガソリンや灯油、軽油は、地方でも都会でも事業者も生活者も使うから、トリガー条項を発動すればよい」とか「小麦粉製品は、パン類、麺類等多くの食品で使う小麦粉だけ安くすればいい」という状況ではない。総じて物価が高騰しているのだ。ガソリンや灯油を使わない人も、小麦粉製品をあまり食べない人も負担は大きくなっている。何かを安くすればいいわけではない。ましてや年金生活者だけが物価高騰に悩まされているわけでもない。

 消費税減税は、すべての商品の値下げになる。消費者だけではなく事業者も、年金生活者もそうでない人も、平等に負担を軽減することができる。しかも、消費税を減税するために事務事業を立ち上げる必要は一切ない。すべて小売店等の民間事業者が、自分たちで対応する。減税するための事務を請け負う事業者を公募する必要もなければ、新たな事務費も発生しない。

 ところが、年金生活者約2600万人に5000円程度の給付金を支給するためには約1300億円かかるが、それ以外に事務費として数百億円かかるという。Go Toトラベルなどもそうだが、給付金を支給するために、必ず事務経費が数百億円単位で発生する。給付金は名目だけで、事務事業を事業者に請け負わせることが目的になってはいないだろうか。

消費税は簡単に変更できる

 今の小売店や飲食店のほとんどのレジは、消費税が何%になっても即日対応できるようにシステムがつくられている。チェーン店であれば、本部で全店舗「明日の0時00分00秒から値下げ」という事前設定もできる。流通業やレジメーカー、レジシステム会社は「税率が何%になるかわからない」「品目によって税率が変わることもある」という経験をしてきているので、現在ではほとんどの税率変更に瞬時に変更できる体制を取っている。極端にいえば「明日から消費税を0にしてください」と決めても、ほとんどの店で対応できるだろう。増税ではないから、店側も喜んで積極的に実行するはずだ。

 消費税減税は、現場でいとも簡単にできる。しかも、苦しい生活に追い詰められている国民の負担を軽減する意味でも効果抜群の政策になるのだ。消費税減税は、早くて簡単にでき、そして物価高騰対策としては最大の効果を生むのである。選挙目当てを狙うのであれば、野党のお株を奪う消費税減税が一番効果的だろう。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

●垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。