ソフトバンクG、有利子負債が20兆円超え…ビジョン・ファンド「含み損」膨張が深刻

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ソフトバンクグループのHPより

 ソフトバンクグループ(SBG)の株価は3月31日、昨年来高値の5750円を付けた。3月15日の同安値の4210円に比較すると36.5%上昇したことになるが、1年前の21年3月16日の10年来高値、1万695円からは46.2%の下落だ。株価は依然として下降線をたどっている。

 孫正義会長兼社長は2月8日、英半導体子会社アームの売却先であった米半導体大手エヌビディアとの契約解消で合意したと発表した。20年9月に契約したが、各国の独禁当局の了解が得られず、エヌビディア側から「取引断念」の意向が示されたと説明した。SBGは16年、320億ドル(約3兆6000億円)でアームを買収した。エヌビディアはアーム買収の対価として100億ドル超の現金とエヌビディア株式を最大8%提供するとしていた。取引総額は当時の株価に換算して約400億ドル。SBGは差し引き1兆円規模の投資のリターンを得るはずだった。

 アーム売却で得た資金を新興企業の投資に振り向け、「AI(人工知能)革命」に弾みをつける戦略を立てていた。1兆円規模の資金化がなくなり、SBGの新規投資にブレーキがかかるのは避けられなくなっていた。

「冬の嵐は終わっていない。むしろ強まっているかもしれない」。孫社長は2月8日の決算会見でこう語った。15兆円を運用する傘下のベンチャー投資部門ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)への逆風が止まらない。21年末からの世界的な株安を受け、SBGの保有株式の価値は大きく目減りし、SVFの含み損が膨張した。21年4~12月期の累計で7677億円の赤字(前年同期は2.7兆円の黒字)。主要な資産であるアリババグループ株式は中国政府のIT企業への規制の強化により株価下落が止まらず、過去1年間で資産価値は半減した。

 これに、アーム株式の1兆円規模のリターンの消失が追いうちをかけた。投資を続けるためには資金確保の手段を広げる必要が出てきた。

アーム株は上場、孫社長は強気

 孫社長は方針を180度転換した。アームは「半導体業界史上、最大の上場」を目指すこととなり、エヌビディア出身のルネ・ハース氏をアームの取締役CEOに起用。「23年3月までに米ナスダック市場に上場させる」(孫社長)という。ロイター(3月24日付)は、アームの新規株式公開を目指すSBGが引受主幹事に米ゴールドマン・サックスを起用する計画であり、株式公開によるアームの評価額は最大600億ドル(約7兆3000億円)になる可能性があると報じた。日本経済新聞電子版(3月26日付)は、SBGがアームの株式を担保に国内外の銀行団から80億ドル(約9700億円)規模の資金を調達し、未上場株を担保にした資金調達は異例だと伝えた。みずほフィナンシャルグループ(みずほ銀行)、米JPモルガン・チェース、米ゴールドマン・サックス、英バークレイズの4行がとりまとめ役となり、国内外の10行程度が協調融資を行う。

 今回の資金調達は、返済義務が差し入れた担保価値の範囲に限定されるノンリコース(非遡及)型と呼ばれる手法。返済時にアーム株の価値が下がっていても、SBGはもともと担保として差し出していたアーム株を手放せば、それ以上の返済義務は負わない。

 アームをめぐっては、さまざまな情報が飛び交っている。3月15日、「最大で1000人規模の人員削減を検討している」と報じられた。アームは全世界で6400人の従業員を抱えており、この数字が正しければ人員整理は15%になる。アームを買収した際に、孫社長は「5年で英国の従業員を2倍にする」と豪語していたが、再上場にあたり削減に転じたことになる。