東京の大気の写真、51年前との違いが衝撃…「大気汚染解消」の陰に深刻な問題

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「gettyimages」より

 昨年10月、Twitterに投稿されたあるツイートが2.3万以上の「いいね」を獲得して話題になっている。ツイートには、東京都千代田区から練馬区に至る道路・目白通りをまったく同じ場所から写した画像が2枚投稿されている。ひとつは1971年の特撮作品『帰ってきたウルトラマン』(TBS系)当時の写真で、もうひとつは51年後の現在の写真となっているのだが、注目されているのが空気の汚れだ。1971年当時の写真を見ると、フィルムの感度、撮影機器の技術的な問題抜きに明らかに煙がかっていることがわかるのだ。

 反対に現在の写真を見ると、煙っぽさは感じられず、クリーンな空気が広がっている印象を受ける。コメント欄では、「昔は青空を目視できず常に鉛色だった」「煙がかっていたので喘息もちの人も多かった」と指摘する声が続出。また「70年代に比べると東京都の空気はかなりマシになった」と語るユーザーも少なくなかった。

 確かに1971年といえば、全国的に公害が社会問題とされていた時代。当時の映像作品では、それを風刺した内容もみられた。たとえば、先述した『帰ってきたウルトラマン』第1話で戦ったヘドロ怪獣・ザザーンや、映画『ゴジラ対ヘドラ』で人々を襲った公害怪獣・ヘドラなど公害へのメッセージを込めたキャラクターが多数登場したのだ。

 あれから半世紀。当時と比べて、大気汚染は改善したと考える人は多そうだが、実際のところどれだけきれいになったのだろうか。今回はアジアの大気状況を調査、発表する一般財団法人 日本環境衛生センター アジア大気汚染研究センターに話を聞いた。

法整備、規制によって東京都は確かにきれいになった

 まず、現在の東京都の大気環境は1971年と比べてどのような状況になっているのだろうか。

「結論から申し上げますと、改善されつつあるといえるでしょう。環境省の定める大気汚染物質は二酸化硫黄(SO2)、一酸化炭素(CO)、浮遊粒子状物質(SPM)、二酸化窒素(NO2)、光化学オキシダント(Ox)と5つあり、これらが空気を濁らせたり、健康被害をもたらしたりする原因となります。このうちSO2、SPM、NO2の3種類の物質は、一般大気環境測定局の調査によると1983年から大気中の濃度が減少傾向にあります。

 また同測定局が行う東京都の大気環境基準の達成率を見ると、2021年時点でSO2、SPM、NO2、COに加え微粒子状物質(PM2.5)がすべての測定局において100%の達成を果たしました。SO2、COは三宅島噴火の影響を受けた2000年を除き1988年から、NO2は2018年から、SPMの達成率も2014年から、そして遅れて調査を開始したPM2.5も2019年度から継続して100%を達成しています。ただし光化学オキシダントに関しては現在も達成率は低く、改善される見通しも立たないことから課題となっています」(アジア大気汚染研究センター)

 データを見ると、かなり改善されていることが窺える。こうした変化は国や都の法整備、規制が功を奏した結果であり、大気汚染物質の発生源ごとに対策を進めていったのだという。

「大気汚染物質の発生源には工場などから出る固定発生源、主に自動車から排出される移動発生源の2つに分けられています。降下ばいじん、ばい煙などの原因となる固定発生源への対策は、戦後国主導で行ってきており、なかでも公害問題が人々の間で問題視され始めた1968年施行の『大気汚染防止法』から、大気汚染に関する基本的な指針が示されました。特に降下ばいじんに関しては、現在400を超える場所で観測されていますが、火山周辺を除いて人為活動による大きな降下量が観測されているという状況はありません。