乾燥時間が3分の1に短縮…ガス衣類乾燥機「乾太くん」絶賛呼ぶも普及しない理由

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リンナイのHPより

 リンナイが製造・販売するガス衣類乾燥機「乾太くん」が、SNSなどを中心に話題となっている。販売から30年を超えるロングセラー商品であり、今年7月には累計販売台数100万台を突破したが、そのパワフルな性能に改めて注目が集まっているのだ。一方で、一般家庭への設置難易度の高さがネックとなり、爆発的なヒットには至っていない。そこで普及に向けてさまざまな取り組みを続けるリンナイに、「乾太くん」の歴史と販売戦略を聞いた。

 家庭用衣類乾燥機の需要は伸びている。23年6月期の洗濯機の国内出荷額は前年度超えを果たしており、その市場を牽引するのは単価の高いドラム式洗濯乾燥機だ。洗濯物を乾かして、取り込むというのは意外に時間のかかる作業であり、日中の洗濯時間を取りづらい共働き世帯や、大量に洗濯する必要のある子育て世帯にとって、衣類乾燥機はもはや必需品といえる。現在、ドラム式洗濯乾燥機を含めた衣類乾燥機の国内普及率は50%ほど。しかし、そのほとんどは電気式で、ガス乾燥機は少数派だ。

 国内で唯一のガス衣類乾燥機メーカーとなるリンナイが製造する「乾太くん」は、電気式に比べて乾燥時間が3分の1ほどで済み、衣類がふっくら仕上がるなどの利点がある。製品に対する評価も高いが、なぜ普及には至っていないのだろうか。リンナイ営業本部次長の伊藤氏に聞いた。

「『乾太くん』は1992年に発売し、今年で31年になります。ドラムを回転させて、ガスの燃焼で衣類を乾かすという画期的な製品です。弊社ではそれより前にリンナイ前会長の内藤明人が海外視察の際に現地の衣類乾燥機に目をつけ、日本でも製造、普及させようと『乾太くん』の前身となる『ドラム型ガスドライヤー』という商品を1976年に発売したのがきっかけになります」(伊藤氏)

 東京ガスとの協業で販売された「乾太くん」は、その抜群の性能とキャッチーなネーミングで知名度を獲得したものの、売上的にはいまひとつという状況が続いたという。

「最初から爆発的に売れたという商品ではなかったですね。ある程度の需要はあるのですが、大きく伸びることもなく、かといって低迷するわけでもなく、毎年一定の台数が売れるという商品で、弊社でも地道にバーションアップさせて販売を続けるという時代が続きました」(同)

 それでもユーザーの満足度は非常に高く、「一度使ったら手放せない」という声も多く届いたという。

「やはりガスならではのパワフルな乾燥力が評価されたのだと思います。電気式の乾燥機は発熱量でいうと1.5キロワットが限界です。ガス式の『乾太くん』ですと、その3倍の4.5キロワット相当の発熱量がありますので、衣類を乾かすパワーという点では優れています」(同)

販売・普及にはネック

 乾燥機としては性能の高い製品だが、販売・普及にはネックがある。ガス栓の配管などの問題で、家庭への設置難易度が高いのだ。

「ガスを使うので、まずはガス栓がないといけません。日本の家屋だと洗濯機の周辺にガスが配管されていることが非常に少ないです。それと、排湿の問題ですね。運転時に湿った空気を排出する管を設置するために、壁に穴を開ける必要があります。排湿は『乾太くん』のスピードと仕上がりのために必要な条件なのですが、これが設置への足かせになっている部分はあります」(同)

 こうした構造的な要因のため、需要はあるが設置が伸びないという状況が続いた。また、2007年にはガス衣類乾燥機を手掛けていたパナソニック(当時、松下電器産業)が撤退。国内メーカーではリンナイ製の「乾太くん」だけとなり、いわば「知る人ぞ知る商品」になっていた。しかし、ここ数年、その製品力が改めて見直され、販売台数が増えているという。