「東京23区の子持ち世帯の年収の中央値が1000万円」が意味する現実

「gettyimages」より
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 東京23区内の子育て世帯の年収の上がり幅が著しいと話題になっている。昨年10月に大和総研金融調査部主任研究員が発表した分析によると、東京23区内に住む30代の子育て世帯の世帯年収中央値が、2017年の799万円から22年には986万円へと上昇し、わずか5年で+23.4%も上がっていることが判明。1000万円にも迫る勢いとなっており、同じく30代の全国平均である+13.2%を軽く凌駕している。

 この急上昇には5年の間で急速に進んだ保育所の増設、共働き率の上昇が背景にあると考えられる。17年時点では23区内の待機児童が5665人と全国的にみて多かったものの、保育所の増設ペースが速まり、22年には32人まで減少。そういった背景があり、17年時点で全国平均より低かった共働き率が30代で58.4%から74.8%にも上がり、全国平均の72.4%を上回る結果になっているのである。

 女性の働きやすさ、育休の取得のしやすさなどが改善してきていることで、子育て世帯の年収が上がり、子育てしやすくなったと考えることもできるが、「東京23区では世帯年収が1000万円ではないと安心して子育てできない」といった見方もある。そこで今回は教育資金に詳しいファイナンシャルプランナーでFPオフィス・And Asset代表の前田菜緒氏に話を聞いた。

子どもを公立校に入れて教育費を抑えれば

「当然ですが、23区内では世帯年収が1000万円を超えていないと絶対に子育てができない、というワケではありません。世帯年収が600~700万円ほどでも公立の中学・高校に進学させたり、生活費を節約して減らしたりすれば、子育てすることは可能です。とはいえ、経済的に余裕を持ちつつ、子どもによい私立校に進んでもらうためには、やはり1000万円以上が望ましいでしょう。

 東京23区は特に、日々の生活費や家賃などの支出が大きく、家計が圧迫されやすい地域です。近年は不動産価格も上昇傾向、かつ高止まりで推移しているため、23区内全体の分譲マンション価格は7000~8000万円ほどで、時価が安い23区東部のエリアでも5000万円ほどが目安になるんです。比較的に安めのマンションを購入したとしても、安くはない住宅ローンを支払うことになるため、さらに月の支出は増えてしまいます。

 加えて、23区では教育に割く金額も高めになりやすいのが特徴。地方に住む家庭では、子どもを地元の公立中学・高校に入学させるケースが大半を占めますが、23区では私立中学・高校の数が多いため、家庭でも受験を検討されるケースが少なくありません。たとえば、子どもの私立中学受験を選択した場合、学習塾の月謝や入学後の学費など教育にかける費用は増加していきます」(前田氏)

 さらに掘り下げると、安易に「東京23区」とひとくくりにはできないため、世帯年収1000万円あれば安心というわけでもないという。

 一般的に23区は中央区・千代田区・港区の都心エリア、新宿区・豊島区・渋谷区などの副都心エリア、江戸川区・足立区・葛飾区などの東部エリア、世田谷区・練馬区・杉並区などの西部エリアといった具合に、場所によって不動産価格や生活コストが大きく変動する。そのため、住むエリアによって子育てのしやすさ、暮らしやすさはまるで異なってくるのだ。

「世帯年収1000万円だと都心エリア、副都心エリアで子育てするには心許ない収入といえるでしょう。たとえば東部エリアと都心エリアでは不動産価格にかなりの開きがあり、都心エリアになると跳ね上がります。そのため、将来のために貯蓄しつつ教育への投資もしていくことを考えて、都心に住みながら子育てできる家庭と想定すると、世帯年収が最低でも1500万円程度を超えていないと難しいでしょう。