ちなみにホンダが子会社化を提案した背景としては、日産は現在、提携する三菱自動車の株式の約27%を保有しているため、ホンダが直接的に三菱自動車の経営に参画できるわけではないものの、資本関係を通じて影響を持ちやすくなるという点もあるとみられます」
注目されるのが台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)の動きだ。昨年、ホンハイは日産の買収に向けた動きを強め、日産がそれを回避するためにホンダとの経営統合に大きく傾いたともいわれていた。ホンハイはEV事業を将来的な成長の柱に据えており、技術力と海外販路を持つ日産への出資を通じてそれらを手に入れることが目的とされる。今回のホンダとの破談を受け、再びホンハイが日産の買収に向けた動きを強めるとの見方もある。
「ホンハイのEV事業部門の最高責任者は、日産の元副COO・関潤氏。日産の社長の椅子を内田誠氏、アシュワニ・グプタ氏と争って敗れたことから日本電産(現ニデック)に移籍しました。いまだに日産に未練があり、ホンハイの日産株式取得を誘導して社長に就くことを狙っているとされています。ただ、ホンハイはタイ石油公社と展開する予定のタイでのEV事業は失敗しました。スマートフォンの受託生産と並ぶ成長事業への育成を見込んでいたEV事業はうまくいっていません。このため、ホンハイがさらに自動車関連事業に投資して、ホンダとの経営統合が破談した日産の株式取得に動くのかは、不透明です」(桜井氏)
一連の経営統合の動きをめぐっては、経営危機にあるはずの日産の役員報酬総額(約29.3億円/24年3月期)が、ホンダのそれ(約17.9億円)の約1.6倍にも上る点も議論を呼んでいた。ちなみに有価証券報告書によると日産の内田誠社長の23年度の総報酬額は6億5700万円。
「24年3月期に過去最高益を達成したトヨタ自動車ですら同年度の役員報酬総額は約36.9億円で、そのうち16億円は豊田章男会長の分が占めるため、他の役員の報酬はそれほど高くありません。日産は社外取締役の報酬も高額なことで知られており、社外取締役を含めた役員のなかには、ホンダとの経営統合によって高額な報酬を失うことを懸念して統合に後ろ向きな役員も少なくないといわれています。日産の役員報酬が高額な理由は、カルロス・ゴーン時代に『役員報酬を国際標準に合わせる』との名目で引き上げたためですが、内田社長としては高額報酬を約束することで役員からの抵抗を抑え、自由に経営しやすくなるという面もあるでしょう」(桜井氏)
(文=Business Journal編集部、協力=桜井遼/ジャーナリスト)