近年では通年採用をする企業は増えている。「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングや星野リゾートなど、大学の学年に関係なく選考を受け付けて内定を出す企業もある。では新卒一括採用が広まれば、新卒採用はどのように変わっていくのか。大手メーカーで人事業務経験のある管理職はいう。
「1990年代に富士通が進めた成果主義は失敗したものの、同社の目標管理制度は同業他社も含めて多くの企業で取り入れられ、その後、日本企業の成果主義的な制度の先駆けになった面があるのは確か。富士通は人事に関して他社に先行してアグレッシブな施策に取り組むことで知られており、今回の新卒一括採用も他社に波及していくと考えらる。
長きにわたって続けられてきた新卒一括採用は制度疲労を起こしており、もう企業側にはのんびりと社員をゼロから育てていく余裕はなく、廃止が広がっていくのは必至だろう。すでにインターンシップの評価が事実上、採用と直結している企業も増え、起業の経験も選考基準に含まれることは当たり前になってきているが、学生側は採用選考において、ますます専門性やビジネス経験が問われることになっていく。よって、大学に入った瞬間から4年後の就職を意識した取り組みが必要となる」
前述のとおり富士通は1990年代に大胆な成果主義的な人事制度を取り入れたが、これにより社内のガバナンスが大きく揺らぐ結果に。2003年3月期には2期連続で最終赤字を計上し、この成果主義には失敗という評価がつきまとうことになった。
「富士通の目標管理制度は他の大企業でも広く採用され、部下が上司と面談した上で短期目標と長期目標を半期ごとに定め、期末に達成度を評価するというもの。特に日本の大企業では部下にとって上司の意向は絶対的である傾向が強く、上司にとっては部下の目標達成度が悪いと自身の評価にも響くので、どのような目標設定にするのかということに多大な労力と神経が注がれることになった。また、個人として定めた目標以外のことに力を入れることには後ろ向きになるため、会社全体でみると社員間・組織間の協力関係が薄れてパフォーマンスが落ちたり、問題が解決されないという現象も生じやすくなった。
そして、どれだけ厳格な評価制度を導入しても、結局は上司の判断で『この部下は実際には目標未達だけど、評価を低くつけると自分の管理・指導責任を問われることになるので評価を高めにつける』『この部下はそろそろ昇進させる必要があるので、高めの評価をつける』といったことも行われるようになりがちで、社員の間で評価に関して不公平感や不満が広がるという現象がみられた。当時、富士通でも若手社員を中心に多くの退職者が出たことは知られている。
こうした失敗を教訓として、日本企業の成果主義的な人事評価制度は徐々にブラッシュアップが重ねられ、現在では柔軟な運用の重要性も意識されるようになっている」(同)
(文=Business Journal編集部)