日産自動車の再建に希望…外国人社長がカルロス・ゴーン級の改革でヒット車誕生

 では、日産再建の芽はあるのか。

「エスピノーサ氏が新社長に選ばれたのは消去法的な意味合いが強いものの、指名委員会は工場閉鎖や人員削減などの厳しいリストラを日本人トップよりは躊躇なく進められるだろうということで、外国人を指名したかったようです。業績を回復させるためにはヒット車をより多く出していくしかありませんが、新車は企画から開発、量産体制の確立を経て発売するまで3~4年はかかりますし、昨今の原材料価格の上昇で一台あたりの開発コストはどんどん上がっているので、容易ではありません。

 今年は『キックス』『エクストレイル』『エルグランド』『リーフ』『スカイライン』などの新型車などを投入予定ですが、そこから大ヒットといえる車が出てくるのかといえば、なかなか難しい気がします」(桜井氏)

 自動車メーカー関係者はいう。

「エスピノーサ新社長の強みは新車戦略の専門家である点と外国人である点です。カルロス・ゴーン並みに大胆な改革を進め、さらに数年後からぽつぽつと新車のヒットが出てくるようになれば、トヨタ自動車の背中は遠いかもしれませんが、ひとまずは単独での持続的な安定経営への希望が見えてくるのではないでしょうか。ホンダとの業務提携は引き続き残るので、将来に向けた技術的な蓄積はそこで行いつつ、粛々と身を切る改革を進められるかにかかっています」

 日産とホンダは昨年(2024年)3月に自動車の知能化・電動化に向けた戦略的パートナーシップの検討開始に関する覚書を締結しており(8月に三菱自動車も参画を検討)、経営統合が見送りになった後もEVやSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)に関する提携は継続する。

これまでの経緯

 日産とホンダが持ち株会社方式による経営統合に向けた協議に入ることで合意したのは昨年12月。背景には日産の経営悪化があった。北米事業をはじめとする海外事業の悪化などに伴い、日産の2024年4~9月期連結決算は、売上高は前年同期比1.3%減の5兆9842億円、営業利益は同90.2%減の329億円、経常利益は同71.9%減の1161億円、純利益は同93.5%減の192億円。当初は3000億円の黒字予想だった25年3月期通期の純利益を「未定」に修正し、グローバルで生産能力の20%削減と従業員9000人の削減を行うと発表した。昨年3月に発表した中期経営計画「The Arc(アーク)」では26年度にグローバル販売台数を23年度から100万台増となる440万台に、営業利益率を6%以上に引き上げるとしていたが、11月には撤回した。

 そうしたなかで日産が繰り出した延命策が、昨年8月にEVの分野などで戦略的パートナーシップを締結していたホンダとの経営統合だった。予定では今年6月に最終合意を締結し、来年(26年)8月までに両社の持ち株会社を上場させて経営統合が完了する計画だったが、協議はわずか1カ月余りで破談。すでに1月の段階で不穏な空気が流れていた。両社は1月までに統合の方向性について一定の判断をする予定だったが、期限を2月中旬に延期していた。

(文=Business Journal編集部、協力=桜井遼/ジャーナリスト)