大丸松坂屋、「外商」売上が30%増に急伸の理由…50歳以下の顧客が増加

「今はネットショッピングで何でも買える時代ではありますが、たとえば美術品のような高額の商品を買う時には、値付けが正しくリーズナブルなのか、モノは確かなのかといった部分は、価格が高くなればなるほどお客様は不安に思われると思うんです。そこで私どもは、長年の大丸ブランド、松坂屋ブランドならではの『安心感』をご提供できますし、価格が適正でモノが確かであるという『安全』をご提供できます」

 大丸松坂屋百貨店が外商お得意様に提供する「安心・安全」は、サービスやコンテンツの提供にあたって、幾人ものプロの目による目利きが働くことによって担保されているという。たとえば美術品であれば、まず外商お得意様についている外商担当者がいて、社内の美術品担当のバイヤーがいる。さらに、その取引先、仕入れ先にも専門家がいて、専門家同士の情報交換や目利きの共有が行われている。このようなプロセスを通じて真贋の鑑定がしっかり行われ、販売価格もリーズナブルで間違いがない、適正価格に落ち着いていくという形だ。

 このほか、若年富裕層ならではの購買傾向などはあるのだろうか。

「購入される商品については、若いかたに限定して何か受けのいいものがあるという感じではありません。むしろ違いがあるのはサービスのほうですね。先ほどお話したLINE WORKSでお客様が求める商品の画像が届き、外商係員がそれを探して確保、販売させていただくという流れが増えています。

 商品の情報はネットでいくらでも取れるようになっていますから、以前よりも情報感度が高くて詳しいお客様が増えています。とはいえ、見つけたものをそのままオンラインでポチッと購入するのは、価格が高くなればなるほど慎重にならざるを得ません。そこで、ネットで調べた商品を実際に見てみたいからと、外商を通じて取り寄せたものをご確認のうえ、購入していただくことが多くなっています。

 あとは限定商品を特別にご提案したり、なかなか手に入らないものを確保したりという部分ですね。もちろん何でも100%、必ずお応えできるわけではないですが、希少価値が高くて店頭には並ばないものをご提供できる、このようなサービスにもご期待いただいていると感じます」

外商部門のさらなる成長戦略とは?

 最後に、伸びゆく大丸松坂屋百貨店の外商部門について、さらなる成長戦略を尋ねてみた。

「当社を含むJ.フロント リテイリングは、グループのなかにGINZA SIXやパルコなど、百貨店とは違ったスタイルの店舗もあります。それらとの連携で、外商の中でも若い層のお客様に対して、より高い価値を感じていただけるサービスやコンテンツをご提供できるように取り組んでいきます。

 あとは、すでにご提供している大丸松坂屋百貨店のスマホアプリをタッチポイントとして、外商をご利用いただく仕組みの構築を検討しています。 本来、外商はゴールドカードにご入会いただいてご利用いただくのですが、お客様によってはたとえば航空会社のマイルを貯める目的などで、フルに利用したいカードをお持ちの方もおられます。そのようなお客様にもアプリを窓口に柔軟に対応させていただき、間口を広げていくことが今後の成長戦略になると考えています」

 激しい競争の中で、老舗百貨店は変わりながら進化を続けていくということだ。

(文=日野秀規/フリーライター)