「この桁違いのトークン数は実用面で大きな違いをもたらすでしょう。従来のAIモデルでは入力できる情報量に限りがありました。そのため、例えば長い文書の内容を理解させたり、複雑な指示を出したりする際には、情報を分割したり、要約したりといった工夫が必要でした。しかし、トークンが飛躍的に増えることで、例えば、分厚いマニュアル全体を読み込ませて特定の情報を引き出させたり、膨大な会話履歴をすべて記憶させた上で次の応答を生成させたりといったことがやりやすくなるでしょう」
限られた作業スペースで工夫して問題を解決していた状態から、広大な作業スペースと潤沢な資料を与えられ、力技で問題を解決できるようになったようなものと言えるだろう。
これまでは、外部の検索システムと連携させるなどして、必要な情報をその都度AIに与えるといった手法(RAG:Retrieval Augmented Generation)が一般的だった。しかし、Llama 4のような巨大なコンテキストウィンドウを持つモデルでは、必要な知識の多くを直接モデル内部に「埋め込む」ような使い方がより現実的になる可能性がある。
ただし、トークンの量が爆発的に増えたからといって、単純には喜べない事情もある。
「いくら大量の情報を入力できたとしても、それをAIが適切に処理し、記憶し、活用できなければ意味がありません。人間がたくさんのビジネス書を読んでも、その内容が頭に残っていなければ役に立たないのと同じように、AIもまた、入力された情報を“理解”し、必要な時に“思い出す”能力が伴わなければ、単に情報が通り過ぎていくだけになってしまいます」
この点に関しては、Llama 4が実際にどの程度の能力を発揮するのか、今後の検証が待たれるところだ。Meta社自身も、発表時点ではまだ限定的なテストしか行えていない可能性があり、その真価が明らかになるには時間がかかるかもしれない。
川崎氏が3つ目の特徴として挙げたのは、マルチモーダル能力の向上だ。マルチモーダルとは、テキストだけでなく、画像や音声など、複数の異なる種類の情報を統合的に扱える能力を指す。
「ただし、正直なところ、この点に関しては、ここ数か月で他のモデルも同様の機能を発表・強化しており、Llama 4が突出して新しいというわけではありません。しかし、着実に進化しているという印象です。他社が先行している部分もあるかもしれませんが、Meta社もキャッチアップし、中堅どころ、あるいはそれ以上のポジションを確立しつつあると言えるでしょう」
最近のAIモデルのトレンドとして、このマルチモーダル対応は非常に重要視されており、Llama 4独自の進化というよりは、「AI業界のトレンドにしっかり押さえている」と言ったほうがいいだろう。
気になるのが、今後Llama 4の活用が期待される分野だ。
「まず考えられるのは、企業内での利用です。特に、セキュリティ上の理由から社外に情報を持ち出すことができないような機密情報や顧客データなどを扱う業務。自社環境内にLlama 4を導入し、活用するケースは増えるのではないでしょうか。
具体的には、社内の膨大なドキュメントや過去の事例を学習させ、問い合わせ対応や資料作成、意思決定支援などに役立てることが考えられます。ほかにも、社内の規定、マニュアル、過去の議事録などを全てLlama 4に読み込ませ、それに基づいて社員からの質問に答えたり、必要な情報を提示したりするシステムを作る企業が出てもおかしくありません」