AWS、世界シェア3割割れの衝撃…「ネオクラウド」台頭でGPU価格破壊、王者の反撃策とは

「ネオクラウドは“AI計算以外はやらない”という思想で作られているため、大手クラウドよりも構造的に安くなる。百貨店と専門店の価格差が生まれるのと同じ原理です。液冷と高密度設計の組み合わせは、電力当たりのGPU性能を最大化し、価格破壊を可能にしています」(同)

■GPU不足時代、スタートアップはどこへ逃げたのか

 2023年以降、NVIDIA GPUは世界的な供給不足に陥り、多くのAI企業がGPUの確保に苦しんだ。

 AWSは自社AI開発や大口顧客へリソースを優先する傾向があり、スタートアップが「半年待ち」「予約すらできない」ケースも多かった。

 その隙を突いたのがネオクラウドだ。彼らは独自電力源や大量調達スキームを使い、スタートアップを一気に取り込んだ。

クラウド戦争の焦点は「インフラ」から「体験」へ

 AWSは価格競争では勝てない。巨大な既存インフラがあり、構造的にネオクラウドほどの低価格を実現できないためだ。

 ではAWSはどう反撃するのか。その答えが、“AIエージェントの体験価値”に戦略を切り替えたことにある。

■AWSの切り札:「AIエージェント・メモリー機能」

 AWSが2025年に強化したのが、AIエージェントに「記憶機能」を持たせる仕組みだ。

 メモリー機能を使うと、AIが以下を長期的に学習し続ける。
・利用者の過去の操作
・プロジェクトの進行状況
・社内ドキュメントの文脈
・担当者それぞれの好み

 つまり、単なるチャットボットではなく、業務プロセスに寄り添う“AIスタッフ”として機能し始める。

■インフラではなく「業務理解」で勝負するAWS

 GPU価格ではネオクラウドに勝てないAWSは、代わりに“企業の業務理解”という高付加価値領域に戦場を移した。これはクラウドの本質を大きく変える。

AWSは巻き返せるのか…「記憶するAI」で逆襲

 メモリー機能がAWSの逆襲の軸になる理由は、AWSがもともと企業システムと深く結びついているためだ。

 企業の基幹系は依然としてAWS上で動くことが多く、ログ、データベース、アプリケーションの多くがAWSに依存している。

 ここに「記憶するAI」が組み合わさると、AWSから離れにくくなる“超強力ロックイン効果”が生まれる。

「AWSは単にGPUを貸すのではなく、企業固有の業務プロセスを理解し続ける“企業専属AI”の構築に舵を切っています。これは価格ではなく体験価値の勝負です。顧客がAWSから離れづらくなる強力な戦略で、ネオクラウドとは別次元の競争軸になります」(同)

■クラウドの未来:棲み分けが進む可能性

 この先、次のような市場構造がより鮮明になるだろう。
・AIモデル開発・学習 → ネオクラウド(価格・在庫の強み)
・企業システムへの深い統合・自動化 → AWS(メモリーAIの強み)

 クラウドはもはや単なる“場所貸し”ではない。「知能をどれだけ提供できるか」が競争の焦点となる。

 ネオクラウドがAI学習分野でシェアを奪う流れは、2026年以降も続くだろう。GPUは急速にコモディティ化し、価格競争はさらに激化する。一方のAWSが生き残る道は、インフラではなく“AIの業務理解能力”という高付加価値領域にどれだけ踏み込めるかにある。

 シェア3割台への回帰は、「記憶するAI」がエンタープライズ市場にどれだけ浸透するかにかかっている。クラウド戦争の主戦場は、すでにGPU量ではなく、“AIの賢さ”の勝負へと移った。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)