「残業したくないんですよね」「それって僕の仕事ですか?」「飲み会ダルいんで行きたくないです」「そのやり方タイパ悪くないですか?」
指示は素直に聞かず、指導をすれば「それってパワハラですよね?」と口答え。世間は「価値観のアップデート」を強いてきて、Z世代への指導はどんどん弱腰になってしまう。好き勝手にふるまうZ世代部下のおかげで、職場の空気は弛緩する一方です。つけあがってさらにモンスター化するZ世代部下は、あらゆる職場に出現し、管理職を困らせています。そんな現状に、ビジネスライターの黒坂岳央さんは「Z世代を甘やかしてはならない」と警鐘を鳴らします。Z世代部下にかき回された職場を正常化するために、Z世代を甘やかさない、毅然としたコミュニケーションを身につけましょう。
休みの連絡はLINEだけ、大事な相談もチャットのメッセージ一通で済ませる。あるいはリモートワークを隠れ蓑にして、進捗報告を曖昧にしながら仕事の手を抜く。「今どき、これが普通ですよ?」と言わんばかりのZ世代の振る舞いに、管理職世代がモヤっとした違和感を覚えるのは、感覚が古いからでも、ましてやデジタル化に追いつけていないからでもない。
Z世代は「デジタルネイティブ」。メディアではZ世代をそう持ち上げる。確かに、一部のZ世代がITスキルを駆使して起業し、大成功を収めるニュースを目にすれば、DX化の波が及ぶ社会では、Z世代は頼りがいのある存在に感じるかもしれない。だが、その期待は残念ながら幻想である。
Z世代の大多数は、単なるスマホネイティブであって、PCネイティブではないからだ。この2つは、似ているようで決定的に違う。若者はTikTokやInstagram、YouTubeといったアプリを、直感的に使いこなす能力には長けている。だがそれは、あくまで「消費者」に過ぎず、「生産者」とはいいがたい。
スマホとPCを使った仕事の最大の違いは、フローとストックで説明が出来る。簡単に言えば、スマホは流れて消える世界であり、PCは積み上げて管理する世界という違いだ。この構造化の概念の差はあまりにも大きい。スマホでスピーディーに操作が出来ても、蓄積された情報のデータベースを上手に使うこととはまったく別スキルが要求される。
ビジネスの中核は、PCを使った生産活動にある。具体的には、資料作成による論理の構築、データ分析による仮説検証、情報セキュリティの概念を理解したリスク管理、そして専用ツールによる実務の遂行だ。これらはすべて、生産デバイスとしてのPC操作能力が求められる。音楽も文章も動画も、知的な付加価値を伴うプロフェッショナルな制作物は、基本的にはPCで作り、スマホで消費する構図がずっと維持されてきた。TikTokでダンス動画をアップするといった行為は、既存のプラットフォームが用意したレールの上で反応を返す「消費の延長線上にある表現」に過ぎず、ビジネスにおける価値創造としての生産活動とは、明確に一線を画するものである。
スマホで完結する世界に育ったZ世代は、一見してデジタル強者に見えるが、実のところ社会に出て初めて、いきなり「Windows」という未知の領域で戦うことになるのだ。
ビジネスの現場でITスキルが革命をもたらしたのは、既存のビジネスロジックや、実務の現場に、効率化のツールとして持ち込まれたからだ。つまり、現場の課題を知り尽くした人間がツールを用いたからこそ、成果に繋がったのである。Z世代のように、現場の実態を知らずにツールだけをいじくり回していても、それはデジタル強者とは呼べない。
管理職世代は、激務の現場で判断を迫られ、失敗し、修正し、責任を取ってきた。その過程で、会社独自のシステム、複雑な決裁フロー、過去のトラブル事例、暗黙のルールを身体感覚として身につけている。
「どの数字が経営判断に直結するのか」、「どこでミスが起きると致命傷になるのか」、「誰に根回しをしておかないと話が止まるのか」。こうした実務経験こそが仕事の土台であり、ITスキルは、その仕事の結果を出力・実現するための、プラスアルファのツールに過ぎない。
実務を知らない若手が、いくら最新ツールを握っても、それは料理器具がそろった厨房に、レシピだけ暗記した料理未経験者が立つようなものだ。便利な調理器具が登場したからといって、料理未経験者がおいしい料理を作れるわけではないし、成果物には明らかな差が出る。高性能なオーブンやレシピサイトが登場しても、すべての人が一流シェフになれなかったのと同様である。
仕事も同じことが言える。仕事の優位性の本質とは、これまでの実績と、再現性のある技術や経験である。プログラミングとて、本質的に問われるスキルとは「プログラミングスキル」というより、「クライアントの課題を正確にヒヤリングし、解決する形で成果物を納品する力」なのだ。
「今どき、AIやITツールが充実しているので、スマホさえあれば、あなたたちよりも効率的に、優れた仕事ができる」などとのたまうZ世代は、ひどい勘違いを拗らせている。